3/22エピローグ さらばシチリアまた会う日まで

「ほーたーるのーひーーかーーーり、まーどーーのーゆーきーー」が、どこかから聞こえてきそうな、帰国日である。

シチリア19日間。思へば、シチリア中を、縦横無尽に我々なりに走り回ったぜ。それでも、西海岸には到達できなかったんだぜ。

シチリア制覇ならず。これは、また帰って来いという、エトナ山の思し召しさ…(私って前向き)。

本日は、「ただただ帰国するだけ」である。

本当は、昨夜のうちに荷物の整理を終わらせておいて、今日は朝早く起きて、少しだけ新市街を歩こうかな、なんて考えていたのだが、甘かった。荷物の準備というものは、前夜にできることには限界があり、その日の朝にすることがかなり多いのである(特に女性は)。

シチリアビギナーで謙虚な私たちは、今日は新市街・ポリテアーマ広場のB&Bに宿泊している。というのも、パレルモ空港行きのバスは、パレルモの鉄道駅を出発して、ポリテアーマ広場を経由して空港に向かうのだ。

空港行きのバス停が近いという条件でホテルを探すなら、鉄道駅よりポリテアーマ広場の方が断然オススメだ。

まず理由の一つとして、旧市街の南に位置する鉄道駅周辺と、新市街ポリテアーマ広場では、治安の良さがダンチである。もちろんポリテアーマ広場の方が良い。鉄道駅周辺は、近づいちゃダメ!ってほどの無法地帯ではないけど、旅行者をターゲットにした悪者がうろついていることがある。

それから、鉄道駅からポリテアーマ広場までは、30分以内で歩ける距離なのだが、その距離をバスで移動しようとすると、異様に時間がかかる。

鉄道駅から空港までは50分、ポリテアーマ広場から空港までは30分というのが目安だが、単純計算だと、鉄道駅からポリテアーマ広場まで20分かかることになる。本来なら、バスで20分もかかる距離ではない。要するに道路が混雑するのだ。

そんなわけで、ポリテアーマ広場に、空港に出発する前夜だけ宿泊した我々。これ、なかなか英断だったと思う。朝ごはんを食べた後、オーナーに挨拶して、B&Bを出ると、空港行きのバス停は、歩いてすぐそこであった。ああ、楽ちん。

パレルモ

結局、バスを待っている間しか、眺めることが出来なかった、ポリテアーマ広場の中心にあるポリテアーマ劇場。新しい建物だがカッコイイ。9時45分のバスを待っている我々だが、バスの時刻を考えれば、何とかすればその前に朝の散歩くらいできそうなものなのに、できなかったのだ。シミュレーションと現実は別物なのである。

パレルモ

私の人生に、来し方行く末縁がなさそうな、プラダの看板が、バス停の目印である。プラダの看板の下に、バスの時刻表が載っているが、実はこれは正式なバス停ではない。

パレルモ

このプラダの看板から、スグの所に、正式なバス停がある。ちょっと薄くて見えにくいと思うが、一番上に「FERMATA BUS AEROPORT」=「空港バスのバス停」と書いてある。

我々は、誰よりも優雅にこのバス停に到着したと思っていたが、このバス停の真ん前にある高級ホテルから、年配のご夫婦がスーツケースと共に颯爽と出てきて、バス停前に立った。負けた。完封負けであった。

バスは、ほぼ時刻表通りにやってきた。だいたい30分間隔で、バスの便数はあるので便利だ。

ちなみに、このポリテアーマ広場からの空港バスの時刻表は、なかなかオンラインで探せなかったので、プラダの看板の下にあった時刻表、参考までに撮影しておいた。(「参考までに」って言うのは、いつ変わるかわからないし、コレが正しいかどうか責任は持てないからだよ!イタリアだもの。)

↓これだよ。
パレルモ

バスはガッラガラであった。シチリアでよくあるように、バスの運転手さんから切符を購入することが出来た。運賃は6ユーロちょっとであった。

バスは、空港に向けて北上して行く。バイバイ、パレルモ。パレルモは、何だか不思議な町だったなあ。ストーカーに遭ったり、スリに遭いかけたりしたけど、なぜだか嫌いにはなれない町だ。まあ、スリに実際モノを盗られていたら、憤慨していたんだろうけどね。我々にはポテチがついてた(幸運のポテチについては、前回の旅行記を参照されたし)。

途中、サッカースタジアムの前を通った。本当は、パレルモ滞在中に、パレルモとユヴェントスの試合があり、観に行こうか、という案もあったのだ。しかし、夜の試合だったので、さすがに初シチリアで、夜のサッカー観戦は調子に乗りすぎかな…と、安全を期して、観戦に行かなかった。

今に思えば、慎重を期すぎたかなあ…行っときゃ良かったなあ…という気持ちもあるが、まあ、自重しておいてよかったかも。でも、姉も私、地方のスタジアムって好きなんだよー。行っときゃ良かったなあ…でも、まあ、自重しておいてよかったかも…(以下、この問答の繰り返し)。

バスは、予定通り、30分ちょっとでパレルモ空港に到着した。カターニアの空港より小さい、と言われるパレルモ空港だが、確かに想像していたよりずっと小さかった。バスが各都市からバンバン到着するカターニアの空港に比べて、活気もない気がする。

パレルモ

しかし、改装したばかりなのか、外側に比べて、内装はスッキリして、特に2階はこぎれいであった。搭乗するのは、アリタリア航空で、ローマ経由で成田へ帰る。イタリアの空港では、カウンターが異常混雑していることもあるのだが、そんなこともなく、さくさくチェックインを済ませて、荷物を預けると、やることがなくなった。

パレルモ

こぎれいな空港だが、何せ小さいので、やることがない。人が少ないので、過ごしやすいけど。

パレルモ

一軒、オシャレなお菓子屋さんがあり、「焼きカッサータ?」みたいなお菓子があったので、買って食べてみた。どこがカッサータなのかわからない焼き菓子であったが、上品で美味しかった。アリタリア航空は、食事やお菓子に期待ができないので、このお菓子屋さんで、機内で食べるお菓子をいくつか購入しておいた(大正解であった)。

パレルモ

空港の待合室から見えたパレルモの海。ゲーテが、パレルモの海は北側にあり、しかも湾なので、それほど色濃くないとか書いていたが、確かにシラクーサの海とは色が違う。でも、チェファルの海は北側にあるのに、真っ青だったなあ。何でだろ。そもそも地中海は、何であんなに青いのか。この謎って既に解けてるのかなあ。

ローマへの便は、時間通りに出発した。バイバイ、シチリア!また、会いたいよ!

パレルモ

ローマ行きの便では、スナックが出た。飲み物はトマトジュースにした。機内で飲むトマトジュースって、なぜだか美味しいのだ。ちなみに、アリタリア航空は、スナック菓子は美味しい。スナックのアリタリア(って往路の時も言ってたな)。

ローマまでは1時間ちょっとで着いた。入国の時とは逆のルートで、日本行きの飛行機が出るターミナルへと移動する。

往路の時も書いたが、ローマのフィウミチーノ空港の案内表示は、数字のターミナルではなく、アルファベットのゲートで示されているので、Eチケットに記載してある数字のターミナルではなく、空港の電光掲示板で、各便の出発ゲート(アルファベット)を確認して、その表示を探して移動する。

出国検査を抜けると、往路の時に通った、チョコレート兼ジェラート屋さんのヴェンキの前に出た。ヴェンキ食べたかったんだけど、乗り換え時間は1時間程度と少なかったので、泣く泣くスルーした。

ゲートの移動を済ませると、あとは飛行機に乗るだけだよ。パレルモからローマへ行く便を、もっと早朝のものにして、ちょっとだけローマで遊ぼうかという案もあったけど、まあ、我々にそんなにタイトなスケジュールがこなせるわけがないので、やらなくて正確だったろうよ。

帰りもアリタリア航空だよ。帰国するまでイタリア気分だよ。

パレルモ

さて、国際便の楽しみと言えば機内食。往路では、2年前と比べて、大幅にRekkaしていたアリタリア航空の機内食に悲しんだ。復路は、往路よりはまだ良かったけど、でもやっぱり質が落ちた気がするなあ(食べ物の悪口はここまで)。

往路では、食事そのものばかりに気を取られてしまったが、実は、もう一つ気がかりなことがあった。それは、機内で出てくるコーヒーのMazusaである(飲み物の悪口は続けるつもりらしい)。往路では、気のせいだろうと思っていたが、やっぱり復路でもMazuかった。薄い色のついたお湯が出てくる感じである。

余計なお世話かもしれないけど、コーヒーだよ、コーヒー!イタリアのナショナルフラッグたるアリタリア航空が、日本人の庶民たる私に、コーヒーにケチをつけられてもよいのか!イタリアたるイタリア、コーヒーの美味しさだけには、プライドを持っていてほしいんだぜ。

ちなみに、帰国便の中で読んだ本は、ヴィトゲンシュタインの論理哲学論考 (岩波文庫)である。すげぇ!ヴィトゲンシュタイン読むんだ!…などと、早とちりしてはならない。「持ち歩くのに薄くて軽くて、かつ眠くなる本」を選んだだけだよ。結果、正解だったよ。えっへへへ。

アリタリア航空

到着前には、軽い朝ごはんが出た。ヨーグルトがついてるのは嬉しかったけど、やはりアリタリア航空の機内食は、量が少ない。男の人とか、これで足りるとは思えないなあ。

アリタリア航空

アリタリア航空の食事量が少ないのは、往路便で分かってたからね!ちゃんとパレルモの空港内のお菓子屋さんで、お菓子を買っておいたから!アーモンド風味で美味しかったよ!お菓子買っておいたのは大正解だったね。お土産用に買ってあった、モディカチョコレートも、機内で食べてしまった気もするが、気のせいかもしれない(とぼけるんじゃないよ)。

というわけで、シチリア旅行は、無事に終わった。イタリアビギナーの頃は、恐い響きでしかなかった「シチリア」だが、イタリアの他の町と同様に、行ってしまえば何てことは無いのである。

しかし、滞在中に対岸のチュニジアでテロがあったし、観光客が巻き込まれるテロは、今なお起きている。世界が平和であることは、おそらく世界中の旅人、いや、旅人に限らずほとんどの人が願うところだ。それなのに、戦争が起きてしまうのは、不思議な気がするが、それが現状だ。

この、一筋縄ではいかない世界で、ちっぽけな私には、世界の平和を「願う」こと以外に、何も出来ることが今は見つからない。

カミュの「ペスト」で、「防ぎようのない災いが起きた時、自分は災いが降りかかってくる人の側に立ちたい」という主旨の話が出てくる。それと少し近いが、どんな時代が来ようとも、ささやかでも、自分は常に平和を願う側でありたい、と思うのであった。
(イタリア旅行記2015完)