イタリア旅行記2015(シチリア旅行記)

3/19 シチリアン・ザ・ワースト・モーニング

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本日は、パレルモ5日目。

何度も書いているが、本当に今回のシチリア旅行は(我々にしては)忙しい日程であった。というのもさ、シチリアは、見たい行きたい場所が多すぎてさ、「あれもこれも」状態になってしまったのだよ。

キルケゴールみたいに、「あれかこれか」をしっかり選んだ旅程にしなければ、ゆっくりできないことはわかってるんだけどさ、わかることとそれができることは別物だよ~と米を買う~♪(中島みゆきのパクリ)

で。本日どうするか。まだまだパレルモで見たい場所はある。しかし、セジェスタのギリシア神殿を見に行きたいんだ。インフォメーションのおねえさんもオススメしてたしさ。

セジェスタとパレルモをつなぐバスの便は、ほとんど選択肢はなく、朝早く行って、昼過ぎには帰ってこなければならない。昼過ぎに帰れば、少しパレルモ歩きもできるだろう、と、「あれもこれも」が結局発動してしまった。

セジェスタ行きのバスは、Tarantola社というバス会社が運行している。このバス会社が、実に頼りない。公式サイトは無く、日本では、どれだけインターネットを駆使しても、このバスの確かな情報を掴むことができなかった。情報化社会に真っ向から反旗を翻すTarantola社の意気込みだけはわかった(似たようなこと、前も私はどこかで言ってたな…)。

それどころか、個人のサイトなどでは、「このバスはもう運行してないかも」とかいう説まである始末。以前は鉄道でも行けたらしいのだが、少なくともTrenitaliaのサイトで調べる限り、パレルモ-セジェスタ(あるいは近郊のカラタフィーミ)間の電車は、2015年3月は走っていなかった。

それで、先述のインフォメーションの女性に、確認してもらったのだが、Tarantola社のセジェスタ行きのバスは、朝7時50分に、駅前から出発するとのこと。これが唯一無二のバスである。唯一無二。そいで、帰りは11時か15時10分と、なななーんと選択肢が2つもあるらしい。スゴイスゴイ(←棒読み)。

そんなわけで、我々はセジェスタへの準備はヌカリ無しだった。…はずであった。

それで、駅のバスターミナルに行ってみたんだよ。たくさんバスがいたよ。その中のどれか一つがセジェスタ行きだと思うからね、「Segesta」という綴りや、バス会社の「Tarantola」という綴りとかを探してみたんだよ。それが、見つからないんだよ。

しかし、慌てる必要はまだ無いんだね。というのも、パレルモのバスターミナルには、切符窓口のような建物が併設している。各バス会社のスタッフさんたちが、ヒマそうに座っている。Tarantola社の窓口はないけどさ、誰かに聞いてみればわかるだろうよ。そこで、やさしそうなおじさまスタッフに聞いてみると、バスターミナルから出るので、待つように、と言われたんだよ。

それで、バスターミナルで待ってみたんだけどさ、気配がないんだよ、セジェスタ行きのバスの気配が。で、もう一度窓口に行って、違うスタッフさんに聞いてみると、このバスターミナルではなく、駅前の広場から出ると言われた。ふむふむ、昨日、モンレアーレ行きのバスに乗った場所だね。だからそちらに行ってみたよ。

でもさ、ここでも気配がないんだよ、気配が。だから、そこに居たバスの運転手的な人に聞いてみると、「セジェスタ行きはバスターミナルから出るよ」と言われた。

…はじまったーッ!!!イタリア旅行名物、たらいまわしッ!!!

時間はね、容赦なく過ぎていくからね。バスの時刻は7時50分。7時半くらいには駅前に着いていたのだが、そろそろ45分近くになっていた。走ってバスターミナルまで戻り、一つ一つのバスを確認してみるが、やっぱり見つからない。

仕方がないので、バスの関係者みたいな人に聞いてみると、「駅前広場だよ」と答え、さっき我々がいた、モンレアーレ行きのバスが出る場所の方角を指さす。

「す、す、すくーじぃッ(←イタリア語でエクスキューズミー)?さっきまで、我々はその場所にいたんですが、そこにいたバスの運転手さんに、こちらのバスターミナルから出るって言われたんですよ!」と、時間もなくなってきて、このスタッフさんにすがりつく(しかない)私。

しかしスタッフさんは、「ごめん、じゃあ出る場所変わったのかなあ。ちょっと前までは、あそこから出てたんだよ。そこまでしか自分にはわからない」とのお答えだった。仕方がないから、また、駅前広場に戻って…。

こんなことを繰り返しているうちに、バスの時刻は無情にも過ぎて行った。時計の針が8時15分を指した時、我々はセジェスタを、公式に諦めた。

…さてさて。では、セジェスタ行きのバスについてのミステリーは、お蔵入りしたかと言うと、実は、翌日、アグリジェントに行く時に偶然、謎が解けたので、この場を借りて謎解きをしておこう。

アグリジェント行きのバスは、駅に併設している大きなバスターミナルではなく、バスターミナルを出て、少し北の方に歩いて右折する、Via Balsamoという、和訳すると「リンス通り」という、変な名前の通りから出る。結構これは有名な話で、地球の歩き方にも載っている。

だから、我々は、翌日、Via Balsamoのバス乗り場に行き、アグリジェント行きのバスに乗り込んだ。時刻もちょうど、この日と同じ、7時半過ぎだったね。そしたらさ。

パレルモ

バスのフロントガラス越しに、こんなものが見えたのさ…。

そうさ!セジェスタ行きのバスは、アグリジェント行きのバスが出る場所から出ていたのさ!そんなことがさ、パレルモを離れる日に判明しても、虚しいだけなんだけどさ!いいんだよ!真理を知ることが無駄なんてことはないさッ!

パレルモ

もー、思わずバスから降りて、写真を撮りに行ってしまったよ。誰も乗ってないし!何で皆さまセジェスタに行かないんだろ。皆さま我々と同じように、バスが見つからないだけだったりして。

あーあ。セジェスタ行きたかったなあ。まあ、いつか、トラーパニ周辺を中心に、シチリアには出直す機会もありそうなので、その時のお楽しみにとっておくかなあ。
じゃ、今日はこれからどうしましょ。

このまま、パレルモに残って、パレルモの、まだ見ていない教会などを巡ってもよい。ただ、一度遠足気分になると、遠足気分を切り替えるのは難しいのである。姉と二人で顔を見合わせた。「…チェファルに行こうか?」。

チェファルは、今回、「パレルモ滞在中にヒマを持て余したら行こう」と思っていた町だ。海辺のリゾート地だが、ノルマン様式の大聖堂と、ガケの迫る地形、崖の上のディアナ神殿などで有名だ。今日はすこぶる天気も良いし、海辺の町に行くにはちょうどよい日和なのではないか。

チェファルは、パレルモから電車で50分程度で行ける。ちょうど今、我々は、鉄道駅の周辺にいたので、駅の構内に入り、掲示されていた時刻表を見てみた。

その時、ふいに背後に人が立っていた。気配に気づいて振り向くと、ドレッドヘアの長髪を、一つに束ねている男性だった。気さくに、時刻表の見方を教えてくれようとする。我々はイタリア7回目なので、さすがに時刻表は読めるのだが、一応お礼を言った。

すると、彼は、「ニホンジンデスカ?」などと、片言の日本語を話出し、急に、ポケットからパスポートらしきものを取り出して、「ワタシ、ナンドモニホン二イキマシタ、ナリタ、ナリタ!」などと言って、入国検査のスタンプを見せてきた。

こうやって、イタリアの観光地で、日本人にすり寄ってくるヤカラは、経験上、よろしくないことが多い。そこで、「ああ、わかりました。急いでいるので」と、別れようとしたのだが、何と、何やら日本語を叫びながら、ピッタリ後ろをついてくるのだ!

切符売り場の窓口まで着いてきて、切符を買おうとする我々に何やらずーっと話しかけてくる。売り場の女性スタッフに、「すみません、彼は私たちの友人ではなく、ついてこられて困ってるのです」と、私の未熟なイタリア語と、身振りで伝えた。こんなヤツにつきまとわれている状態で、財布を出したりしたくなかったのだ。

女性スタッフが、この男性を何とか追っ払ってくれて、切符を購入することはできた。しかし、切符を持って、駅のホームに行こうとすると、また、ヤツがついてくる!

時刻表を見ていた時に、我々がチェファルに行くことはバレてしまっていて、「マイマザー、チェファルニスンデル!ワタシモチェファルニイク!」と、英語日本語まぜまぜに言い散らしながらついてくるのだ。

姉が強めに、「ノー!」と、意思表示をすると、「アナタ、ワガママ」などと言いながら、とにかくもついてくる。何なのだ…。その時、ヤツの知り合いのような人が、ヤツに声をかけてきた。ヤツがその人と言葉を交わしているうちに、我々は逃げた。

それにしても、あまりに気持ち悪かったので、「切符は買ったけど、チェファルに行くのはもうやめる…?」と、姉と相談した。
私はかなりテンションが落ちていて、チェファル行きはやめようかなくらいの気持ちだったのだが、姉は、「電車は検札もあるから、わざわざ切符買ってまではついてこないでしょ。天気も良いし、チェファルに行きたくなってきた」と言う。まあ確かに、このままパレルモに残ってつけ回されるより、チェファルに行ってしまった方がよいかもしれない。

そこで、周囲に気を付けながら、駅の方に戻り、チェファル行きの電車が出るホームで、電車待ちの乗客が、何人も集まっているベンチがあったので、そこなら安全だろう、と、他の乗客に溶け込むようにして電車を待つことにした。

すると、さっきの男が、またこのホームにやってきたのだ!イタリアの駅では、切符を持たない人でも、ホームまで入ることができる。到着した電車の中を覗き込んだり、周りをキョロキョロしたりして、明らかに我々を探している…。えっ?何なの?何でそこまでするの?いったい何がしたいのだ?

そして、やはり我々は見つかってしまい、またヤツはイタリア語、英語、日本語混じりで、チェファルがどうとか、マイマザーがどうとか、言い散らし始めた。周りのイタリア人は、ポカーンとしてヤツを見ている。やっぱり、イタリア人から見てもおかしい人なのかもしれない。

こういう時は、曖昧な態度を取っちゃいけないと思い、我々は明らかにイヤそうな顔をして、ヤツに何度か「ノー!」とか、「バスタ!(イタリア語で『やめて』)とか、周りの人にも聞こえるように言った。

電車の出発時刻が近づくと、ベンチにいた人たちが、電車に乗り込んだので、我々も、後ろから何やらわめきちらしているヤツを無視して、一緒に乗り込んだ。すると、ヤツは、電車の中まで入ってついてきた!

さすがに有り得ない!私がヒステリックに「ノー!」「ノー!」と、周りのイタリア人が無視できないくらい騒ぐと、やっとヤツは、「チェファル、ガンバッテ」と、意味不明なことを言って、電車を降りて行った。…ああ、よかった。チェファルまではついてこないようだ。

それにしても、何なのだ…。普通、イタリアで、必要以上に日本人に寄って来るヤカラは、観光の商売目的か、はたまたナンパ目的なのだが(女性に対する男性の場合)、今回のコヤツは、どちらが目的とも思えない。何一つ観光を勧めてくることもなかったし、ナンパだったら一人旅の女性を狙うだろう。

今後の旅行のためにも、ヤツの正体が知りたくて、頭をひねっていると、そういえば、愛用しているイタリア語旅行会話集に、こんなフレーズが載っていたのを思い出した。

「あの人につきまとわれて困っています」(Mi trovo in difficolta perche sono stata inseguita da quella persona.)
(もちろん、このイタリア語を、私はきちんと覚えていなかったので、今回苦労したんだよ、てへ)

こんなフレーズが、何で旅行イタリア語会話集に必要なんだろうなあ、と思っていたのだ。おそらく日本人旅行者に、意図は不明だが、つきまとってくるヤツが、イタリアの観光地では、それなりの頻度で出没するのだろう。

意味不明につきまとわれるのは、本当にストレスで不快な体験だったが、こういうことも有り得る、と頭の中に入れておくだけで、次回以降の免疫になるかもしれない。

特に女性で一人旅でイタリアに行かれる方は、こういう事態も想定しておいた方がよい。対策としては、防犯ベルを持ち歩くこと、人気のない場所に行かないこと、万が一つけ回されたら、できれば警察、見つからなければお店の人や周囲の人で構わないので、はっきり助けを求めることだと感じた。

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あー、ヤツのせいで、なかなか気分は晴れないが、電車の外には、濃い青空が広がっている。その下でさざめくススキ。シチリアに来てから天気がイマイチの日が多かったが、今日はなかなか天気がよさそうだ。

パレルモからチェファル

そして、海辺に突き出たチェファルの町も見えてきた。本当はセジェスタに行く日だったこの日。朝っぱらには変な男につきまとわれた日。…しかし、チェファルで出会った景色は、そんな幸先の悪い一日を、あっという間にワンダフルデーに変えてしまったのである(次回予告)。

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