3/14シラクーサからパレルモへ 束の間のエンナ

忙しかったシラクーサ滞在。この旅行記でも、シラクーサ旅行記は、「忙しい」を20回以上は書いた気がする。そのシラクーサとも、あと数時間でお別れである。

ミニバスに乗って、考古学地区からオルティージャ島に戻ってきた我々。14時のバスでパレルモに向かうが、B&Bにスーツケースを取りに行って、バスターミナルまで歩く時間を考えると、シラクーサ歩きに使える時間はあと1時間くらいである。

この短い時間で何をするか。私「今回のシチリア滞在で、珍しく暑いから、グラニータを飲むチャンス!」。姉「昨日閉まってたカンノーロ専門店でカンノーロを食べたい!」。…アンタたち。歴史のかほり漂う古都で、食べることしか考えられないのかっ!

というわけで、まずはグラニータを飲むべく、ドゥオーモ広場へ向かった。

ドゥオーモのちょうどお向かいに、テラス席を展開している「Bar del Duomo」というバールが、グラニータが美味しいとB&Bのオーナーが言っていたので、行ってみた。

シラクーサ

グラニータは、レモンやオレンジ、アーモンドなどの果汁が入った氷菓子である。画像はアーモンド味。シチリアの名物お菓子の一つだが、これまであまり気温が高くなかったので、食べられずにいたのだ。

味は…うん、アーモンドミルクを、凍らせたらこうなるよね、って感じだった。もともと私は、それほど氷菓子が好きではないというのもあると思うが、ジェラートの方が好きだな。それに、同じ氷菓子なら、私の地元・鹿児島のしろくまの方が美味しい。というわけで、グラニータ経験は終わった。でも、もしかしたら、シチリアのあっつい夏に食べると、また違うのかもしれない。

お次はカンノーロ専門店に行くよ。ドゥオーモ広場から、カラヴァッジョの絵があるサンタ・ルチア・アッラ・バディア教会の右手の道に入ると、右側にすぐあるのが「I Cannoli del RE」というお店。直訳すると「王様のカンノーロ」である。

オーダーを受けてから、記事にクリームを詰め込んでくれるシステムだった。たいてい、後からクリームを入れてくれるお店は美味しいのよね(期待!)。クリームの味は、リコッタチーズ、レモン、ピスタチオ、モディカチョコレートと揃ってますぜ!迷ったが、B&Bのオーナーが、レモンクリームをおすすめしていたので、ここはレモンで!

シラクーサ

レモンクリームにピスタチオのトッピング。珍しく、カンノーロが巻いている形ではなくて、ソフトクリームのコーンのような生地の中に、クリームを入れる。

…これがねえ!もう、どうしましょう!美味しかったんですよ!さすがカンノーロ専門店っ!シチリアでは、20本くらいカンノーロ食べたけど、その中で特に美味しかったのが、このシラクーサの「I Cannoli del RE」と、モディカのチョコレート屋さん「ボナユート」の2軒であった。

本当にしくじったよ。全味食べてしまいたいのに、最終日にこのお店の美味しさに気付くとは…!冬場だけかもしれないが、がっつり昼休みを取るお店で、午前中か夕方しか開いていなかったので、ぜひ時間を合わせてトライしてほしいっ!ていうか、マジで全味制覇したかった…!

グラニータを飲み、カンノーロを食べた後は、バスに乗る前に、軽くランチを食べておかなければである(シラクーサ滞在最後の1時間だというのに、食べてばっかり…)。今、(最高の)カンノーロを食べたばっかりで、それほどお腹もすいていなかったので、適当なバールで、アランチーニ(ライスコロッケ)でも買って、海でも眺めながら立ち食いすればよかろう、ということになった。

適当なバール…。ちょうど我々は、アレトゥーザの泉近くにいた。アレトゥーザの泉のような、有名観光地の近くのお店というのは、日本でもそうだけど、高くてそれほど美味しくないというのがセオリーである。まあ、軽く食べられれば何でもいいし、と、アレトゥーザの泉の、道路を挟んですぐそこにあるバールで、アランチーニと水を買い、テイクアウトにした。

シラクーサ

このバール。

期待していなかったアランチーニなのだが、お、美味しいっ!ホウレンソウ入りと、サーモン入りを購入したのだが、今まで食べたアランチーニの中で、私は一番口に合うのだが!期待していなかったものが美味しいと、何だか、その日一日、いいことがありそうな気がしてくるのである。旅人は単純。

シラクーサ

アランチーニを食べながら眺めた海。あー気持ちいい。シラクーサの海は本当にキレイ。ちなみに、一般的に、イタリアで一番海が美しいと言われるのは、プーリア州のオートラントらしい。

シラクーサ

海のほとりの湧水、不思議で美しいアレトゥーザの泉と、最後のご対面。おととい見た時より、時間帯のためか、太陽の光にキラキラ輝いて、さらに美しく見える。この泉が、元は美しいニンフ(妖精)だったなんて神話にもうなずけるのだ。(だが、裏に回ると、ゴミとかペットボトルが浮いて、パピルスの茎にひっかかっているんだぜ…。ポイ捨てダメ!)

いやー、シラクーサは忙しかったけど楽しかったなー!というか、濃かった!マニアーチェ城に行けなかったのと、サン・ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ教会が工事中だったのが心残りではあるが。

シラクーサ

最後は、陽光に照らされる美しいドゥオーモ広場で〆っ!いつかまた、シラクーサに帰ってこれるかなあ…。その時はぜひ、走れメロスごっこがやりたいぜ(嘘でしょ!?)。

B&Bに戻り、チェックアウトは先に済ませておいたので、荷物だけ引き取って、オーナーにお礼を言って、バスターミナルまで歩いた。

パレルモ行きのバスは1日に二本。朝8時発と、昼14時発である。ってことは、この14時のバスは、最終バスってことだね!乗り逃すわけにはいかないね!

シラクーサのバスターミナルは、「シチリアのバスターミナルがわかりやすいわけないだろ」という、イタリア旅行中級者の予想を、見事に裏切らないバスターミナルである。古い時刻表が貼ってあるし(我々が剥がしてくればよかった)、長距離バスと市バスが入り乱れてるし、バス停はあちこちにあり(整然と並んでない)、どこからどのバスが出るのかどこにも書いていない。何でなの?本当に何でなの?

パレルモ行きのバスは、Interbusというバス会社が運行する。ということは、Interbusという表示を探せばよいだろう、と、ウロウロしてみると、バスターミナルの、道路側から見て左手の方に、Interbusと書かれたブースがあった。

シラクーサ

このブースで、Interbusの運行するバス便の切符は購入できるらしい。パレルモ行きのバスは、指定席になるらしく、名前を聞かれ、切符(というかバウチャーのような紙)には、席番号も記されていた。観光シーズンオフの3月だったので、この日は、座席にまだ余裕があるようだったが、シラクーサとパレルモを最短距離で結ぶこのバスは、夏には満席になることも多いらしく、「早めの予約がおすすめ!」と、貼り紙がしてあった。

ちなみにこのバスは、バス内で運転手さんから切符を購入すると13.5ユーロだが、切符売り場で購入すると、12ユーロと割引になるらしい。オンライン予約では、さらに11ユーロになると書いてあった。シチリアのバスは、バス内で切符を購入できることが多いのだけど、切符売り場で購入した方が割引になる場合があるなら、切符売り場が近くにある場合は、そこで切符を購入した方がよいかもである。

切符売り場のお兄さんに、バスがどこから出るのか聞いてみると、このブースの裏側から、ということだった。ヨシ。切符もゲットしたし、バスの乗り場もわかったし、じゃあ、次にすることは…。長距離バスに乗る前にすることは…?…ソウですね。済ませておかなければなりませんよね。

バスターミナルにはトイレがなかったので、ちょっと歩いて、バールでカフェを頼み、トイレを借りた。鉄道駅近くのバールだったが、観光客嫌いなのか、たまたま機嫌が悪かったのか、シラクーサにしては珍しく、スタッフさんの感じが悪かった。私一人だったら、そそくさと出ていくところだが、姉が強心臓の持ち主なので、「気にしない、気にしない」と、で―――んと構えていた。姉強し。

さてっ。これで、シラクーサのみならず、シチリア島東部とお別れである。

長距離バスは、だいたいスーツケースはバス内に持ち込めないので、下の荷物入れに入れる。人の多いバスターミナルでは、いつもこの荷物入れにスーツケースを入れるのが心配である。出発まで、ドアが開けっ放しなので、バスに乗った後、誰かが持って行ってしまわないか、気になるのだ。そのため、スーツケースを入れた後は、バスの中から、眼光鋭く荷物入れのあたりを監視している。まあ、私はタレ目なので、周囲から見たら、全然眼光鋭くないかもしれないが。

このパレルモ行のバスは、全席指定とは言っても、乗客はほどんど守っていなかった。満席じゃなかったので、運転手さんも、人数だけカウントして、出発した。バイバイ、シラクーサ!バイバイ、シチリア東部!

さあ、向かうはシチリア西部、シチリア最大の都市パレルモである。シラクーサからパレルモを結ぶこのバスは、シチリア島の真ん中を突っ切って行く。
途中から、高速道路と並行して走っている線路を走る電車と一緒になった。

シラクーサからパレルモ

カターニアから、シチリアの中心にある町・エンナに向かっている電車であろうか。かなり本数は少ないため、貴重な電車くんを見てしまった。エンナが、シチリアのちょうど真ん中にあるので、エンナと各町を、鉄道かバスで効率よくつないでくれたら、エンナを経由して、シチリア内移動はかなりやりやすくなると思うのだが、どうなのかなあ。

シラクーサからパレルモ

こちらがシチリアの中心にそびえる、高台にあるエンナの町(だと思うたぶん)。このエンナが見えるサービスエリアで、10分程度の休憩が入る。3時間15分の長旅の、ちょうど中間あたりに取られる休憩だ。この途中休憩があることを知っていたので、いつも長距離バスにビクビクしている私(不安オブトイレ)が、このバス旅に対し、そんなに緊張していなかったのだよ。

冬場だったせいかもしれないが、サービスエリアのトイレはそこそこキレイだった。もうそれだけで幸せだったよ。だが、売店は激混みだった。ココで、休憩中に何かを買おうと考えるのは甘いかもしれないので、バス内で飲み食いするものは、あらかじめ持ち込んでおいた方がよいかも。この長蛇の列の後ろに、お菓子を握りしめたバスの運転手さんがいたので、ヨシ、バスはまだ出発しないな、と、しばらく気分だけ、エンナの空気を味わうことにした。

というのも、エンナは、行きたかった町なのだ。ギリシア神話で、大地の女神デメテルの娘ペルセフォネーが、冥界の神ハデスにさらわれたのが、ちょうどここらへんだとされている。私がこの神話が好きなのは、何度かこのブログにも書いてある。ハデスはどのあたりの地面を裂いて現れたんだろう…と、荒々しい風景をちょっとだけ眺めて楽しんだ。

さて。エンナを出発すると、行程はあと半分である。

シラクーサからパレルモ

途中で、こんな雪山に出くわした。えーっ?エトナ山?と思ったが、エンナからパレルモに行くのに、エトナ山のふもとを通るとは思えないし、形も違う。あとで地図を調べたところ、マドニエ山地じゃないか、と思った。それにしても、シチリア島って、エトナ山以外に、こんなにデッカイ山が他にもあったのねえ…。

そして、しばらく走ると、ついに海が見えてきた!シチリア島の東側の海岸から、真ん中をつっきって、西側の海岸に出たのだ。

シラクーサからパレルモ

海の向こうに突き出ている半島を、「あ、もしかしてトラーパニ?」と言った私に、姉は「バカじゃないの」と言った。ソウデスネ。これでトラーパニが見えてたら、パレルモを通り過ぎてしまってますよね。すみませんねえ!

トラーパニは、今回のシチリア旅行で、泣く泣く行程から外した町である。19泊すれば、シチリアを一回りできるのではないかという我々の当初の目算は、(我々の鈍足を考えると)実に甘かったのだ。トラーパニやエリチェ、モツィアなど、シチリアの西端の方は、いつか必ずリベンジしたいものだぜ…!(リベンジの使い方微妙に間違ってますよ)

バスがパレルモに近づくと、異様に道路が混み始めた。車が全然、整然と走ってないし…。そうだ。今から我々は、マフィアの犯罪都市と名高い、パレルモへ向かっているのだ。そのことを、今までのシチリア滞在が平和すぎて忘れていた。ここからは、マジで気を引き締めなければならない。何てったってパレルモ。おそらく恐れているほどは怖い町ではないのだろうけど、大都市にはいろんな人がいるので(日本でもそうだが)、今までとは違った心構えで臨まねばなるまい。

…それにしても。パレルモへと向かう道路は混雑しすぎだぜ。ぜんっぜんバスが前に進まないのだが、パレルモのバスターミナルに着いた時には、だいたい時刻表通りだったので、この混雑まで計算に入れたバススケジュールは、なかなか大したものだと思った。