3/11ラグーザ旅行記2 イブラのドゥオーモはあっち向いてホイ

スペリオーレからイブラへは、とにかくどんどん下って行くのだが、途中で、こんな秘密のトンネルみたいな下り階段も発見。イタリアの古くからの町は、町全体が一つの建物のような印象を受けることがあるが、こういう階段も、まるで大きなお城の中にある通路のようだ。

イブラに降りて、一番最初に目に入ったのが、このプルガトリオ教会

ラグーザ

階段の上に乗っかった、この地域に特徴的な雰囲気のバロック教会である。イブラに入ってすぐのところに、スペリオーレ側に正面を向け、「イブラにようこそ!」と言っているような、存在感のある教会だ。

この写真を撮影したのは私なのだが、この写真はダメダメである。プルガトリオ教会は、スペリオーレとイブラの交差点というか、道路が交差して四方に広がっている地点に建っている。その交差している道路が、スペリオーレの新市街にあるような、真っ直ぐな直角道路ではなく、フリーハンドで描いたような、微妙なうねり具合で、その道路と相まった雰囲気が何とも言えないのだが、この写真じゃあ、全然わからないね!

そう。ここはイブラの入り口あたりなのだが、もう、整然とした新市街であるスペリオーレとは全然違うのだ。カオスである。そして、バロック建築のうねっとしたラインが、そのカオスに非常に似合っている。

そして、階段に上って、スペリオーレの方を振り向くと、イブラより高い位置にあるスペリオーレの町が、崖のように迫っている風景が見える。ラグーザの風景と言えば、上のスペリオーレの方から、下のイブラを見下ろす風景が至高なのであるが、ここプルガトリオ教会前から、上のスペリオーレを見上げるのも、なかなか面白い。何だか、触れると壊れそうな、大きなガラクタが、上から迫ってきているような感覚だ。美しい風景というわけではないが、興味深い。

でもね、完全なる逆光だったので、写真は撮ってないよっ!私の写真への情熱など、逆光一つでくじかれるわけである。諦めたらそこで試合終了なので、すぐ試合終了になるのである。というわけで、ぜひ現地に足を運んで、オノレの目で見て下さいね☆(何と役立たずな旅行記であることか…)

このプルガトリオ教会の近くには、コゼンティーニ邸などの見所があるのだが、先にドゥオーモ方面へ向かうことにした。あんなにたくさん朝ごはんを食べたのに、お腹がすいてきたのだよ。ドゥオーモ近くのレストランで食事を取る予定なのであるよ。

地図だけ見ると、迷いようのない道が続くのだが、何故だかドゥオーモに行くのに、少し迷った。それだけ、イブラの方は、タテタテヨコヨコ90度のスペリオーレと違って、中世からの迷い小道が多いのである。中世に発展した町は、外部者を排除するため、わざと迷宮状の、地元民でなきゃわからない狭い道を作っているという説もある。だが、こんなに迷宮状であれば、私のような方向音痴女は、アヤシイ者じゃなくても道に迷ってしまうよ!中世ヨーロッパに生まれなくてよかったよ。

どうでもいいことなのだが、アヤシイ者が「私はアヤシイ者ではありません」と言うセリフほど、説得力のないセリフってあんまりないんじゃないかと思う。本当にどうでもいい話なので終わり。

そいで、迷いながら歩いているうちに、ドゥオーモの裏手に出たらしく、本日ランチを食べる予定のレストラン、その名も「Duomo」というお店を発見した。

このお店、CREA Traveller (クレア・トラベラー) 2013年 10月号 [雑誌]に掲載されていて、「シチリアナンバーワン」とか書かれていた。しかも、結構なお値段がするのに、トリップアドバイザーでの評価がすさまじく高かった。トリップアドバイザーでは、高額なレストランは、辛口評価を受けることが多いので、これは、大金を積んでも食べる価値のあるレストラン、ということなのである…。

そおーっとのぞいてみると、ランチメニューが張り出されていた。ランチコースで一人45ユーロ。…へー、クレアトラベラーで見た時は、一人100ユーロくらいは覚悟しなきゃいけないのかなと思ったのだが、ランチメニューは、もう少しリーズナブルなお値段で食べられるようだ。45ユーロであれば…うん、このくらいの贅沢、き・きっと、罰は当たらないさっ!

お店の中を見てみると、スタッフさんがお掃除中だった。まだランチタイムの開店時間になっていないらしい。結構な有名店なので、予約しておいた方がいいかなと思い、一時間後くらいの予約を取った。

いやー、高級ランチを予約してしまったよ!予約してしまったからには、もう後には引けないから!後戻りできる道などない…(←このセリフ、どこかで使ってみたかっただけ。むかーし、デスノートの帯のアオリ文句として書いてあって、カッコイイ!と思った私は、デスノート衝動買いしてしまったんだよ。)

というわけで、一時間後には、後には引けない高級ランチが待っているっ!それまで、イブラの町の散策を楽しもうっ!

やや、一時間後のランチのことでそわそわしてしまって、集中力のない私を、現実に引き戻したのは、この、イブラのドゥオーモである。

ラグーザ

堂々、堂々たるバロック式のドゥオーモっ!ドゥオーモの前には、ゆるやかな下り坂の広場が続き、いかにも南国って感じのヤシの木がそびえ、開放感のある、明るくて気持ちの良い風景となっている!

ラグーザ

ドゥオーモ前の、緩やかに下っている広場はこんな感じ。写真で見れば、それで?という感じかもしれないが、この緩やかに下る広場と、バロック式に飾られたドゥオーモの組み合わせは、結構カッコイイ。

大変に不思議なのが、ドゥオーモ前にまっすぐ伸びている坂の広場に対し、ドゥオーモへと向かう階段はまっすぐに作られているのだが、ドゥオーモ自体は、やや右側斜めを正面として建っていて、不思議な角度になっているのだ。普通、聖堂が坂の上にある場合は、真っ直ぐに坂の頂点に立っているものなのだが、なぜ、こういう風にねじれた作りになっているのだろうか。

ラグーザ

この、聖堂を正面近くから撮影した写真でわかるだろうか。聖堂の正面に対し、階段は、左側の方へ斜めについている。この階段の方が、目の前の坂に対して、垂直に作られている。つまり、坂の真ん中に立ってこのドゥオーモを見ると、階段は真っ直ぐ見えるが、ドゥオーモは、あっち向いてホイ!とばかりに、右側を向いているのである。

そのため、やや引いた位置から聖堂を真っ直ぐに見ようと思えば、広場の右側にある、カフェのテラス席付近から見なければならない。

ラグーザ

このカフェ。せっかくだから、テラス席でエスプレッソでも飲みながら、真正面から教会を眺めることにした。

このカフェのテラス席からドゥオーモを眺めると…

ラグーザ

こんな風に、ハンサムな正面を、拝顔できるのである。いやー、このテラス席はVIP席だね!カフェの椅子だから、エスプレッソとかオーダーしないと座れないのだが、このカフェは、観光地の特等席を持っているカフェによくあるような、「席代がめっちゃ高い!」という殿様商売ではなく、エスプレッソも2ユーロしないくらいで良心的であった。トイレも綺麗だったらからおすすめだよっ!

さて、どうして、聖堂と階段がねじれているか…だ。

これは推測なのだが、イブラの町が地震後に再建されていることが大きいのではないだろうか。もともと、この坂の道の方が先にあって、この坂の頂点に大きな聖堂を作るには、地盤的に真っ直ぐ建てるよりも、右側にねじった形で作るしかなかったんじゃないのかな?で、階段の方は、坂の下の方から見ることを想定して、聖堂ではなく坂の方に垂直に作ったとか。…「地盤的」とか、自分でもわけのわからない単語を使っている時点で、これは、私の多大なる妄想の可能性大。

このドゥオーモ前にいたのは、だいたい正午前後だったのだが、お昼のお知らせなのか、教会の鐘が鳴り始めた。三拍子の、かわいいメロディを奏でている。教会の鐘が、メロディを奏でるのは、シチリアの特徴なのか、他の町でも、お昼や夕方に、かわいらしい3拍子の曲が、鐘で演奏されていた。ああ、最高の場所で、素敵な鐘のメロディを聴くなんて、ぼかァ幸せだよ!

さて。写真で見ると、扉が閉ざされている感じがする、ラグーザ・イブラのドゥオーモ。確かに、階段には、柵がしてあって、扉も閉ざされていて、足を踏み入れることはできない。しかし、実は、左手の方に入り口があり、そこから中に入ることができた。イタリアの教会は、一見閉まっているように見えても、実は入り口が別の場所にあったりすることがある。

教会の中では、ちょうど中学生くらいの修学旅行生たちと鉢合わせた。3月は、イタリアでは修学旅行の季節なので、いろんな観光地で修学旅行生たちに、もまれてしまう。日本人観光客に慣れていない町から来ている子どもたちだと、結構じろじろ見られる。「コンニチワ」とか「ニイハオ」などと声をかけられることもある。

ラグーザ

教会内部は、白くて美しい。天気がよかったこともあって、ステンドグラスが映えていた。

ラグーザ

厳格な顔つきが特徴のカギじいさんは、聖ペテロ。

ラグーザ

かわいらしいカタツムリのステンドグラス!キリスト教教会に、何だか異教的な感じの、こういう動物の絵が飾られているのは面白い。

キリスト教は、理知的で、教義もしっかりしている、いわゆる「ロゴス」の宗教だと言えるだろうが、その一方で「羊は従順だからヨシ」「蛇はずる賢いからダメ」「犬は忠実だからヨシ」「猫は不服従だからダメ」…みたいに、まるで民間信仰みたいな、動物の良し悪しがあるのが面白い。やはり、庶民に広く支持を受けるには、ロゴスだけでなく、パトス的な部分も必要なのだろう。

ちなみに、カタツムリはキリスト教では「怠惰」などの象徴で、あまりよくないイメージらしい。怠惰って悪いことなんだーと、ナマケモノの私はアホなことを思ってしまうのだが、まあ、少なくても良いことではないんだろうね(覚えておきなさい!自分!)。しかしキリスト教世界でも、古くからの民間信仰では、「忍耐」などの良いイメージもあるらしく、イタリアでも、良い意味でのシンボルとして使われるのを目にすることがある。そう言えばスローフード教会のシンボルもカタツムリだ。

ドゥオーモを出た後は、ドゥオーモから少し坂を下ったところにあるサン・ジュゼッペ教会まで行ってみた。

ラグーザ

ラグーザ・イブラのドゥオーモや、モディカのドゥオーモを一回り小さくしたような、かわいらしい外観の教会。イブラやモディカのドゥオーモの妹分って感じがするのは、実は、この3つの教会を設計したのは、ガリアルディという同じ建築家だそうだ。この人の作る教会好きだよ!私は建築のこと全然わからないけど、好きってことはわかる!(それがわからなかったら、アンタの脳みそ要修理だよ)。

ラグーザ

内部も、ドゥオーモと少し似ていて、真っ白であるが、まるっこくてこじんまりとしていてカワイイ。

ラグーザ

まあるい天井もカワイイ!真ん中の丸い絵は、ブローチみたいだ。全体として、アクセサリーのような教会である。

この教会気に入った!と、姉も私も思っていた時、おもむろにシスターが二人出てきた。そして、聖歌隊席のような所に座り、聖書のような本を開いて、アカペラで聖歌を歌い始めたのである!清純な歌声が響く、小さな教会。信者じゃなくても、心が洗われる気がするねー。

奥から、さらに二人のシスターが出てきて、合計四人になった。後から出てきたシスターの一人は、かなりお年を召していて、どこから歌うのかわからなくて、となりの人に尋ねていた。歌い方を間違えて、隣のシスターに、肘で小突かれていたシスターもいた。そういうあたりが、聖歌合唱といえでも、イタリアチックで可笑しかった。

いやー、サン・ジュゼッペ教会よかった!イブラのドゥオーモからすぐなので、ぜひ開いている時間(冬場なら午前中か夕方以降)に、足を運ぶことをおすすめしたい。

さて。ランチを予約した時間が近づいてまいりましたよ…。ドゥオーモの裏の方へ戻って、リストランテ「il Duomo」を目指すとするよ…!

ラグーザやモディカのような、「ノート渓谷のバロック都市」は、ローマやナポリに比べると、町全体のバロック度は低いと書いたが、ドゥオーモの裏手には、バロック的なものが結構ある。バロック的なものとは…

ラグーザ

こういう風に、バルコニーの下で、奇妙に絡み合って、どろーんとした表情でこっちを見ている、天使とか人間とか怪物とかのことである。バロック美術って、本当にこんなもので、プロテスタントに対抗して、カトリックの威光を高めることができたのかは、ハナハダ疑問であるよ。ただ、好きか嫌いかと聞かれると、少なくとも私は、嫌いでは、ナイ…。

ラグーザ
この人なんか、あばら骨は出てるわ、額にいっぱいしわが寄ってるわ、バルコニーを支えるという重労働がきつすぎて(?)ハゲかけてるわで、カワイソウ。まー、でもこれも芸術なのだ。現代アートだって、新聞紙とか投げ散らかしただけでアートだからなあ。芸術は奥が深いよ。

…というわけで、これから、当ブログの旅行記には極めて珍しい「贅沢ランチレポ」が始まるよ…ッ!おそらく、ほぼ全皿紹介して長くなるので、ページを改めます。お腹を空かせて待っておいてくださいッ!(って、読むだけなんだから、お腹が空いてたらさらに空腹感じちゃうじゃんよ…)