3/7フィレンツェ旅行記6 眠るヨハネは思わず主役

おはよう、フィレンツェ!5日目の朝っ!

おはようドゥオーモくん

宿泊しているレジデンスから見えるドゥオーモとジョットの鐘楼。ドゥオーモが見える場所に宿泊する幸せよ!

今年のイタリア旅行は、本当に天気に恵まれている。母は、「だからお母さんは晴れ女って言ったがね」と、自分の功績だと信じ切ってやまなかったが、もしかしたら本当にそうかもしれん、と思うほど晴天が続いた。

特にこの日は、雲一つない快晴だったので、ミケランジェロ広場に行くことにした。晴れた日のフィレンツェでは、どこか高いところに上って、町全体のパノラマを見渡すのが吉である。

毎日動き回ってばかりなので、母を午前中は休ませて、ミケランジェロ広場はお昼から行くことにした。で、姉と私は、午前中は、カスターニョの「最後の晩餐」の鑑賞と、事務的な用事を済ませることにした。

カスターニョの「最後の晩餐」とは。旧サンタポッローニア修道院という所に残る、ルネサンス初期のカスターニョという画家さんが描いた、「最後の晩餐」の壁画である。この絵は、よくレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を語るときに引き合いに出されるので、結構有名な絵である。無料で鑑賞できる絵なので、どれ、行ってみようかね、と、姉と出向いたのである。

旧サンタポッローニア修道院は、サン・マルコ広場の西側にあり、観光客があまり行かない界隈にある。私と姉も、4回目のフィレンツェで、初めて足を運ぶ場所だ。

地図に従って行ってみると、何だか、人の住んでいないアパート…みたいな修道院だった。中庭にはごちゃっと粗大ゴミみたいなものが置いてあるし…。

階段の上の方に矢印を向け、イタリア語で「食堂はこちら」みたいに書いてある張り紙があった。「最後の晩餐」をテーマにした絵って、食堂に描かれることもあるし(ミラノのレオナルド・ダ・ヴィンチの作品がそう)、この矢印に従って進めばいいのかな、と思い、階段を上がってみると…。たどり着いたのは、ほんまもんの食堂だった…。

ガチャガチャと食事を用意する音が、奥の方で響いていて、テーブルと椅子が用意された、学食みたいな食堂…。もちろん壁画なんかどこにもない。

…何だろう、ココ…。もしかしたら、今は大学として使われている建物なのだろうか?日本でも国立大学とかの裏手とかって、妙に粗大ゴミみたいなものが置かれていたりして汚いけど、何となくソレを彷彿とさせるような場所だ。…カスターニョの絵はどこに行けば見られるんだろう?いろんな場所を探して回ってみたが、妙に、建物内に入れちゃうのも、何だか大学っぽい雰囲気だなあ…。

いったん上った階段を降りて、中庭のさらの奥の方に小さな庭があったので行ってみると、割烹着を来た食堂のおばちゃんらしき人がいた。なぜカスターニョの絵を見に来た我々の目の前に、割烹着姿のおばちゃんがいるのだろうか…。仕方がないので、食堂のおばちゃんに、地球の歩き方に載っているカスターニョの絵を見せて、「この絵はどこにあるんですか?(どうせわからないだろうなあ…)」と、ダメ元で聞いてみた。

すると、おばちゃんは、「いったん門から出て右方法へ行って、次の角でまた右に曲がって、バールのお向かいに入口があるのよ(キラーン)」と、教えてくれた!ありがとう、おばちゃんっ!ダメ元とか言ってすまなかった!

というわけで、入口は「V XXII Aprire通り」という、読み方もよくわからない通りの方だった。サン・マルコ広場からまっすぐ伸びている通りである。おばちゃんの言う通り、お向かいにバールがあるあたりに、見落としそうなドアがあり、そこが入口であった。

旧サンタポッローニア修道院そのものの正面入り口は、レパラータ通りという通りにあり、我々もそこから入ってしまったのだが、カスターニョの「最後の晩餐」の入り口は、「V XXII Aprire通り」の方なので、注意が必要である。

中に入ると、受付にひげのおじさんがヒマそーに座っていて、ノートに名前を書くように言われた。このカスターニョの「最後の晩餐」は無料で見学できるのだが、記名が必要とは、ちょっと珍しい。

「最後の晩餐」は、びっくりするほど保存状態がよく、想像していたよりもずっと素敵な作品であった。

カスターニョ 最後の晩餐

こちらが全体図。一人だけ、テーブルのこちら側に座っているのがユダ。一人だけテーブルの反対側に座っているのは何とも不自然だが、レオナルド・ダ・ヴィンチ以前の作者さんが描く「最後の晩餐」では、こんな風に、ユダだけハブられて座っている図が普通らしい。思わず、そんな風にハブったから、裏切られたんだよ…って突っ込みたくなるが、どの人物がユダであるかを明確に示すための描き方だそうだ。

思った以上に、独特の色合いといい、人物の顔だちといい、心に残る作品であったのだが、気になるのはやはり、「最後の晩餐」の絵の中に描かれる、場違いに眠りこけるヨハネ。

「最後の晩餐」の絵では、イエスが、「この中に裏切り者がいる!」と言い、弟子たちがガビーンと衝撃を受ける場面が描かれるのだが、イエスの隣で、こんな緊迫した場面の中、ナゼだか寝ている弟子がいるのである。しかも、妙にイケメン。

この眠っている弟子がヨハネで、なぜ眠りこけているか、というと、聖書に、「最後の晩餐」の場面で、イエスに寄りかかっていた弟子がいた、という記述があり、それがヨハネだ、という定説があるのだそうだ。別に眠らせなくても…と思うが、逆にただ寄り添っているのも不自然、てなわけで、絵に描くときはヨハネを眠らせる描き方が多いらしい。

ちなみに、イケメンなのは、単にヨハネが十二弟子で一番若いから。十二弟子とイエスの13人を描くときに、むさい男13人も描くのもつまらないので、若いというヨハネくらいは、中性っぽい美少年で描くのだろう。

てなわけで、いつもかわいらしく描かれるヨハネ。しかも、「最後の晩餐」の絵では、かわいい寝顔まで披露してくれるので、ついに私はヨハネのファンになってしまった。自分でもしょうもない…と思うのだが、ファンになったものは仕方がない。こんなところで強がっても、何の意味もないのである。

というわけで、私は、私の好きな十二弟子のヨハネのことを、洗礼者ヨハネという他のヨハネさんと区別するために、ヨハネっちと呼ぶことに決めた。

で、こちらが、カスターニョが描いたヨハネっち。

カスターニョ 最後の晩餐 眠るヨハネ

…こんな緊迫した場面で、本格的に眠っておりますな。私も、高校時代、授業中に、こういう風に寝てたな…(英語辞典のジーニアスを枕にして…)。しかし、イエス(ヨハネの隣)もユダ(向かい側の黒髪)もヨハネに視線を向けすぎだよ。「あらー、眠っちゃったよ」「誰が起こす?」みたいな…。これでは、絵の中でヨハネが主役ではないか。

もちろん、「最後の晩餐」の主役は、イエスとユダである。だが、眠るヨハネがあまりに場違いすぎて、一番目立ってしまっている「最後の晩餐」の絵は多いのだ。

この部屋には、「最後の晩餐」以外にも、カスターニョ作品がいくつか残されていた。特に、展示してあった下絵は、補助のための線なども描かれていて、遠近法ってこういう風に描いてたんだー、と興味深いものがあった。

ちなみに、私のつたないイタリア語力で説明書きを読むと、「最後の晩餐」の反対側の壁には、もともとピエロ・デッラ・フランチェスカの壁画もあったのだそうだが、焼失してしまい、描かれた柱だけがかろうじて残っているのだそうだ。ここにピエロの絵もあったら、ここはもっと有名な観光地になってたんだろうなあ。ただ、ピエロの絵も残っていれば、無料では入れてくれないだろう。

想像以上に良かった、カスターニョの「最後の晩餐」であった。フィレンツェの中では穴場と言えるスポットだが、無料でこんな素敵なフレスコ画が見れるチャンスを見逃すのはもったいない!サン・マルコ広場近くに行く機会があれば、立ち寄ってみることをおすすめする(入口気を付けてね!)。

旧サンタポッローニア修道院の後、我々にどんな事務作業が待っているか、というと、ミラノで観戦する予定の、チャンピオンズリーグの「インテル対マルセイユ」のチケットをゲットする仕事があるのだ。

基本的にイタリアでは、その試合が行われる町でしかサッカーのチケットは買えないのだが、調べまくってみると、時々、他の町で購入できる場所が見つかることがある。インテルのチャンピオンズリーグの前売りチケットは、いくつかの銀行が販売を牛耳っているのだが、その中のひとつである、ミラノが本拠地の「Banca Popolare di Milano」という銀行の支店が、フィレンツェにもあることを突き止めたのである。

インテルのホームスタジアムである「サンシーロ」は、観客収容数が多いし、当日券でも買える可能性が高いのだが、「長友が見たい」というVIP客である母の望みを叶えるためには、確実に事前にチケットはゲットしておきたい。しかも、なるべく早く購入した方が、良席をゲットできる可能性は高い。というわけで、できればフィレンツェの「Banca Popolare di Milano」の支店で、チケットを買ってしまおうぜ、ということになったのだ。

実は、「Banca Popolare di Milano」フィレンツェ支店を探すのは苦労した。公式サイトで、だいたいの位置は確認しておいたのだが、2日前に、「ここらへん」と思っていた場所に行ってみると、銀行街になっていて、銀行が多すぎて、「Banca Popolare di Milano」が見つからなかったのだ。

そこで、昨日、観光インフォメーションで、「観光案内所なのに、銀行の位置なんかわかるかなあ…」とダメ元で聞いてみたのだが、何と、賢そうなお姉さんが、サラサラサラっと電話帳で住所を調べてくれて、すぐに教えてくれた。

駅からドゥオーモへと向かうメインストリートである「チェレッターニ通り」と、「Via de Vecchietti」という通りの交差点にある、教会のお向かいに銀行はあった。…何度も通った場所だったのだが、銀行の時間外に探していたため、看板が出ていなくて、みつからなかったらしい。

イタリアで銀行に入るのは初めてである。犯罪防止のためか、一人ずつ、順番に中に入らなければならない。自動ドアも二重になっている。日本の万人ウェルカムな感じの銀行とは大違いだ。

で、この銀行の内部がムダに美しかった!

ミラノ銀行フィレンツェ支店3

この赤じゅうたんが敷かれた階段を上って行く。

ミラノ銀行フィレンツェ支店2

何、この貴族のお屋敷みたいなお部屋。

ミラノ銀行 フィレンツェ支店

極めつけが、この天井画。えーと、ここ、銀行っすよね?

美しすぎる銀行であったが、お客さんは誰もいなかった。窓口に行って、インテル対マルセイユのチケットを買えるか聞いてみると、購入できる、とのことだった。イエイっ!

ただ、ここフィレンツェで、インテルのホームゲームの試合チケットを買う人は少ないらしく、受付のお姉さんはよくわかっていなくて、うしろからお偉いさんが来て説明していた。だが、ちゃんとサンシーロスタジアムの座席表は用意してあったので、マレにではあるが、買う人はいるのだと思われる。売る気もちゃんとあるのだと思われる。

というわけで、インテルのチャンピオンズリーグのチケット、無事にゲットォォォ!いやー、これで、フィレンツェでの使命は果たしたよ。あとはノビノビ遊ぶだけさ!(今までだって遊んでばっかりですが…)ちなみに、チケット購入にはパスポート(本物)が必要なので、忘れちゃいけないよ!

…これからミケランジェロ広場に行くのだけでと、何だか長くなってきたので、また次回。
3/7フィレンツェ7 本日ミケランジェロ広場日和へ続く