イタリア旅行記2017

3/10ギリシャから南イタリアのレッチェへ 汝、グリに乗るなかれ

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ギリシャのイグニメッツァから南イタリアのブリンディシまで夜行フェリーで移動

今年のイタリアには、ギリシャから船で入る。(このイタリア旅行記はギリシャ旅行記2017からの続き)

ギリシャ北西部の、イグニメッツァという港から、イタリア南東部の港町ブリンディシまで、9時間程度の夜行フェリーの旅である。

イグニメッツァ港では、非常にヒドイ目にあった。船は、深夜3時に、2時間遅れてやってきた挙句、船の横で、大型トラックが出て行くのを30分も排気ガスにさらされながら、待たされた始末。しかも私は風邪っぴき。これは何の試練だろうか。

今回予約しているのは「Grimaldi lines」の船。深夜1時にイグニメッツァ発の予定だったのに、船に乗り込んだのは、深夜3時半であった。

風邪引きの体調で、眠さと、排気ガスにやられて、もはや意識が朦朧としている私であったが、一応、「Grimaldi lines」のスタッフさんは、笑顔で迎えてくれて、予約してある個室(キャビン)まで、スーツケースを運んでくれた。これで、私の試練も終わったかな?とチラとでも考えた私は、甘かった。

グリマルディラインのキャビン

こちらは船室。なかなかこぎれいにしていて、眠りやすそうである。

キャビンのトイレ

こちらはトイレとシャワー。手狭ながらも、お掃除は行き届いていて、使いやすそうである。画像には写っていないが、タオル、石けん、ビニールカップの備えはある。

さて、たった9時間程度過ごすだけの船室、ベッドも眠りやすそうだし、トイレ・シャワーもそれなりに清潔だし、何か問題でも?とお思いになるであろう。

問題は!ク、クサイのである!

これは、何の臭いかというと…おそらく、湿気の臭さである。いったい、何ヶ月換気していないのであろうかというような、空気の悪さ。

しかし、私は風邪のため、鼻がつまっていたので、ダメージは浅かった。もろにダメージを食らったのは姉である。姉は、始終、顔をひん曲げていた。

まあ、それでも、こんなシンドイ体験も、きっと終わってしまえば笑い飛ばせるのだ。とにもかくにも疲れていた私たちは、それぞれベッドに滑り込んで、眠った。幸いなことに、寝心地は悪くなかった。

イグニメッツァ港

船室の窓から、遠ざかっていくイグニメッツァ港が見えた。バイバイ、イグニメッツァ。

この港で受けた仕打ちを考えると、今後、この港に戻ってくる可能性は低い。これから、ギリシャからイタリアに渡る際は、パトラ港を使うか、飛行機移動することになるだろう。でも、パトラからイタリアに行くなら、必ず経由することになるので、今生の別れにはならなそうだなあ。

よっぽど疲れていたのか、私は、5時間ほどで、ピタッと目が覚めた。普段の私なら、5時間の睡眠というのは短く、二度寝してしまうところなのだが、相当深く眠ったらしく、目が覚めた瞬間から頭が冴えていた。

船で横になって眠ると、緩やかな波のうねりが背中から伝わってきて、私には非常に寝心地がよいリズムとなるのである。ウォーターベッドでなく、ウェーブベッドみたいなものを開発したいくらいだ(したいだけ。できるとは言ってない)。

アドリア海の朝

おはよう、アドリア海。朝日はとっくに昇っていた。

睡眠には貪欲な私なのだが、せっかくスッキリと目が覚めたものを、二度寝する必要もないので、シャワーを浴びてスッキリすることにした。こんな船室だから、期待はしていなかったが、熱いお湯がしっかりと出て、気持ちよくシャワーを浴びることができた。

シャワーから出ると、姉も目を覚ましていた。鼻が詰まっている私と違い、部屋の悪臭にさらされ続けている姉は、目を覚ましたそばから不機嫌そうだった。「シャワーは予想以上に気持ちよく出たから、浴びたら?」と提案してみると、不機嫌そうにシャワー室へ入っていった。

ドライヤーは部屋には備えてなかったが、我々は小さなしょぼいドライヤーを、こんな時のためにスーツケースに入れてあるので、髪を乾かして着替えたら、だいぶ昨日からの仕打ちから立ち直ってきた。

姉がシャワーから出たら、こんな臭い船室に閉じこもっている必要はないので、甲板にでも出てスッキリするといいだろう。時計を見ると、朝の8時半くらいだった。予定では、もうブリンディシに着いている時刻だが、イグニメッツァ港を出る時に、既に2時間半遅れていたので、到着はまだまだのハズだ。

姉がシャワーから上がり、着替えていると、ドアをノックするような音が聞こえた。廊下の音だろうと聞き流していると、何と、廊下から、鍵を勝手に開けられたのである!!!

着替え中だった姉は、「キャー!」と悲鳴を上げた。そこには、船のスタッフと思しき不愛想な男性が立っていた。勝手にドアを開けられて、さすがに頭にきた私が、廊下に出て、「何事ですか?」と聞くと、「もう8時半だ。キャビン(個室)を出てくれ」などと言う。

「え?遅れてたのに、もうブリンディシに着くんですか?」と驚いて聞くと、「いや、まだまだだ。でもキャビンは8時半には出てもらうことになっている」とのこと。

いや、聞いてないし、どこにも書いてないよ。だいたい、そっちの都合で2時間以上遅れてるんだから、到着時刻になったからって、まだ到着してないのに出ていけっておかしいだろ!

…とか、もろもろの言い分はあったのだが、風邪で声が出ないのと、語学力のなさと、あと、この臭いキャビンはどうせ出ようと思っていたこともあり、「わかりました。でも、見ての通り着替え中だったので、今すぐには出れません。準備ができたら出ます」と答えた。

不愛想なスタッフは、勝手に開けてゴメンねの謝罪もなく、次は隣の個室を追い出しにかかった。隣からは、ドイツ人っぽい感じの男性が出てきて、私が言いたかった文句とだいたい同じようなことを、主張している英語が聞こえてきた。しかし、不愛想スタッフは、聞き入れていなかった。

「何なの…」と、怒り心頭の姉。私もふつふつと怒りが沸いてきた。そこで、せめてもの抵抗で、急がずに、こっちのペースで船室を出る準備をした。グリなんかの言いなりになってたまるか。そう、「Grimaldi lines」は、さまざまな不快さを積み上げて、既に正式名称ではなく、「グリ」と呼ばれるようになっていた。後で考えたら、ぐりとぐらに失礼であった。

しばらくすると、ドンドンドン!と、「さっさと出ていけ」というメッセージでドアが叩かれた。私は「スィ、スィ、スービト(わかってるよ。すぐ出るから)」と、怒鳴り返した。そして、次は、隣の部屋がドンドン叩かれていた。隣のドイツ人男性も、さっさとは出て行っていないらしい。当たり前だっつーんだよ。

さっさと出ていけっつったのはアンタらだからね、と、我々は普段なら「来た時よりも美しく」の精神で、ある程度は出ていく部屋は整えるものなのだけど、忘れ物がないことだけ確認したら、ヒドイ有様で部屋を後にした。

3年前にギリシャからアンコーナまで乗船した「Superfast」は、ビュッフェやカフェ、レストランなどがあり、明るくてきれいな船だったが、グリには、たったの一か所、食事やお茶を取るだだっ広いスペースがあるだけだった。

もともとは8時半着のはずだったので、船の中で朝ご飯を食べるつもりはなかったのだけど、あと2時間は船の中で過ごすことになりそうなので、朝ご飯を食べることにした。

グリマルディラインの船内

ここが、唯一のグリのレストスペース。もさっとした写真だが、本当にこのスペースはこの写真通りにもさっとしていた。

観光客らしき人々は少なく、屈強な感じのオヤジばっかりが座っている。私は直感で、「この人たちは大量に積まれているトラックの運ちゃんだな」と感じた。正しいかどうかはオヤジたちのみ知る。

朝ご飯はビュッフェ形式で、クロワッサンやヨーグルト、オレンジジュース、あと、目玉焼きやベーコンなどもあった。時間がたっぷりありそうなので、多めにトレーに載せたら、二人で€18くらいになった。多めに載せたとはいえ、高い。グリのやつ。会計してくれたおじいさんはいい人だったけどさあ。

あとは、ぼんやりと、船がブリンディシに着くのを待つのみだった。以前乗った「Superfast」は、あちこち船を探検する楽しさがあったけど、グリは、ここしかスペースがないので、遊びようもない。

あーあ。本当は朝8時半着のハズだったから、ブリンディシでは海沿いのカフェで朝ご飯を食べて、ちょっとだけ港町ブリンディシの空気を楽しむつもりだったのに、その時間は完全になくなったなあ。それもこれもグリのせい。

姉はレッチェをかなり楽しみにしているため、「早く着けばいいのに…」とイライラしていた。私は、グリをかばう気持ちが一切なくなっていた。私の頭の中には「二度とグリには乗らない」という格率が、形成されていた。

しかし、姉も私も、怒りつつも諦めていた。グリのもっさりとした暗い船内は、希望とか情熱とかそういうものをトーンダウンさせる空間だった。とにかくいつかはブリンディシに着く、その時にはグリとおさらばできる。それだけで十分であった。姉と私は、おとなしくレッチェの予習をしながら、淡々と椅子に座っていた。

ブリンディシ

ブリンディシが見えてきたころには、もう11時が近かった。2時間半の遅れ。そういえば、以前乗った「Superfast」も、船自体は綺麗だったけど、2時間くらい遅れた。ギリシャからイタリアへ船移動するのは、もうやめにしようかな、と、ぼんやりとブリンディシの岸辺を見ながら思った。

ブリンディシ

ブリンディシのカッコいい城塞が見えてきた。よし!心機一転、新しい岸辺から新しい旅の始まりだゼ!これでグリを降りられるゼ!

これが二度目のギリシャ→イタリアの船旅だったので、我々は船が港に着いてから、乗客が船を降りるまで、法外な時間(シャレじゃなく30分くらい)かかることを知っていたので、停船してからもトイレに入ったり、だらだらと椅子に座って過ごした。

予想通り、人間が降り始めたのは、停船してから30分ほど経ってからだった。それだって、船を降りるルートがよくわからず、ぐるぐる回ったりして、ようやくグリから解放されたのであった。

 

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