イタリア旅行記2017 フェラーラ滞在編

3/15フェラーラ旅行記2 受胎告知は音楽の扉

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さて。フェラーラ初日ながら、フェラーラに来た目的のひとつ、カテドラーレ美術館に突撃っ!

カテドラーレ美術館は、名前の通り、フェラーラの大聖堂(カテドラーレ)にゆかりのある美術品を展示している。「カテドラーレ付属」とは言わないので、付属なのか別の管理なのかはわからないが、大聖堂とは少し離れた、別の教会内にある。

フェラーラのカテドラーレ美術館

こちらが美術館の中庭。イタリアではよく見る、プリンみたいな井戸がある素敵な回廊である。

フェラーラは本日から4泊。その中で他の町への遠足にも行く予定ではあるが、フェラーラの主要な観光地には入場する予定である。そこで、フェラーラ観光の共通カード「MyFE」を購入することにした。

「MyFE」は、フェラーラの主要観光地はほぼ無料で入れるのと、宿泊税が免除になるのが嬉しい。1泊2日券(€12)、2泊3日券(€14)、5泊6日券(€18)と三種類あるので、€18の5泊6日券を購入。カテドラーレ美術館の切符売り場で購入できた。

フェラーラのカテドラーレ美術館

教会の建物を利用している美術館ということで、上を見上げると天井がかわいらしい。

フェラーラのカテドラーレ美術館

頭部だけが残っている、ビザンティン時代のモザイク。なかなか精巧な作品である。この美術館にあるということは、もともとはフェラーラ大聖堂内にあったものなのだろうか。

私が、フェラーラのカテドラーレ美術館に長年入りたかったのは、レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知 (平凡社ライブラリー)という本で、この美術館に所蔵されているコスメ・トゥーラの「受胎告知」の写真を見て、ぜひ現物が見たいと思っていたからである。

フェラーラのカテドラーレ美術館

お目当ての作品は、2階の広い部屋に展示してあった。

え?どこが受胎告知?と一瞬思ってしまう構図である。この作品は4枚のパネルになっているが、真ん中の二つと、左右のパネルで別作品だと考えてよいのだと思う。真ん中の二つがセットで『サン・ジョルジョと竜』、左右がセットで『受胎告知』。

なぜこんな変わった作りになっているかというと、この板絵は、もともとは大聖堂のオルガンの扉絵だったそうだ。

ここからは私の推測だが、今、4枚が見えている状態は、扉が開いている状態なんじゃないかな。左右の受胎告知の絵を、それぞれ真ん中にスライドして閉める形だったのではないかと。つまり、オルガンの扉を閉めている時は、左右の受胎告知の絵が、真ん中がくっついた形で見えていて、開けると、真ん中に龍退治が表れていたのではないかと。

まずは全体に驚いてしまうこの作品だが、じっくり見てみると、『受胎告知』は素晴らしい。

フェラーラのカテドラーレ美術館

何と静謐な大天使ガブリエル。視線をやや下に向けて、おめでたい神の子の受胎を告げている場面なのに、どこか切なそうな表情である。

フェラーラのカテドラーレ美術館

聖母マリアと神の子イエスがこの後たどる過酷な運命を示唆しているような、悲しげな表情にも見える。

こちらは落ち着いた表情で、懐胎を受け止める聖母マリア。マリアの耳元に鳩が描かれているが、鳩は精霊の象徴である。マリアが大天使から言葉を(耳で)受け取ることで、精霊によって身ごもるという解釈で描いているのだとか。

この聖母は決して美人というわけではないが、表情や仕草が実に優美である。絶世の美女のように描かれることもあるマリアだが、このように優しさ・温かみが全面に出る描き方も素敵だなあ。

長らく実物を見たいと思っていた『受胎告知』だが、想像以上に大きくて、また、かなり近くで見ることができて、大満足であった。そろそろランキングを作れるくらいイタリアでは『受胎告知』の絵を見てきたが、この作品は私の中で少なくともベスト10に入るのではないかと思う。

さて、真ん中の『龍退治』の絵は、静謐な『受胎告知』と対照的に動的な作品である。

フェラーラのカテドラーレ美術館

右側が、龍(悪の象徴)の口の中に槍を突き刺そうとして、まさに龍を倒そうとしている聖ジョルジョ。左側は、龍に恐れおののいている女性(どこかのお姫様?)。非常にダイナミックな作品で、どこかコミカルさも感じられる。

フェラーラのカテドラーレ美術館

フェラーラの守護聖人であり、大聖堂(カテドラーレ)に祀られている聖ジョルジョ。コスメ・トゥーラの描く人物は、どこか哀愁が漂っている。独特のアクが感じられるが、私は嫌いではない。

フェラーラのカテドラーレ美術館

竜におびえるお姫様。やっぱり美女ってわけではないけど、セリフをつけるなら「あーれー」ですね。気取りがなくて親しみを感じられる。

コスメ・トゥーラは1400年代の画家で、時代としては初期ルネサンスに当たる。フィリッポ・リッピやフラ・アンジェリコと同じくらいの時代人である。もっと後の盛期ルネサンスの時代の作品ほど洗練されていない時代の絵であるが、私は初期ルネサンス期の、素朴でシンプルな味わいが結構好きである。

しかし、このオルガンの扉絵は、静的な『受胎告知』の扉を開けると、動的な『サン・ジョルジョと竜』が表れるのだとすれば、非常に音楽的で、粋な作品に思える。音楽がない状態(オルガンが閉まっている状態)が静で、音楽が流れる状態(オルガンが開いている状態)が動。こうなると、オルガンに付随したままの状態をぜひ見たかったなあと思ってしまう。

このコスメ・トゥーラ作品を見ただけで、このカテドラーレ美術館は大満足だったのだが、他にも予想以上に素敵な作品の数々が展示されていた。

フェラーラ カテドラーレ美術館

フェラーラ出身のガロファロという、後期ルネサンスからマニエリスム期にかけての画家さんが描いた『聖ジョルジョ』。コスメ・トゥーラが描いた龍退治の聖人と同一人物とは思えないイケメンである。

ガロファロの絵は、この後フェラーラで何作品か見たが、このようにクセのない美女・美男を描いた絵が多い。面白みに欠けるといえば欠ける気もするが、さわやかな色使いが印象に残る作品をいくつも残していた。

そして姉と私が、コスメ・トゥーラの『受胎告知』と同じくらい夢中になって見てしまったのが、『12か月の扉の彫刻』。13世紀頃作られた、「Maestro dei mesi(=月の巨匠)」と通称で呼ばれている、無名の彫刻家による作品群である。フェラーラの大聖堂にかつて飾られていたものらしい。

フェラーラのカテドラーレ美術館

1月。顔が二つあるのは、古い年(=老人)から、新しい年(=若者)に変わることを表しているそうだ。西洋の時間間隔は、神様が世界を作って、最後の審判までまっすぐ流れていくというイメージなのだが、こういう「時の回帰・循環」を表すイメージもあるんだなあ。興味深い。

フェラーラ カテドラーレ美術館

3月と4月。靴がめっちゃカワイイ!3月は手に小花を持っている。4月が手にしているのは、豊穣の角かな?4月になると、草花が咲き誇るというイメージ?

7月。人間も馬もめっちゃ働き者の顔をしている。こういう12か月の彫像は、季節によって移り変わっていく農作業で表現されることがある。

フェラーラ カテドラーレ美術館

9月。これはわかりやすい。葡萄を収穫して、おそらくワインを作ろうとしている。ちなみにイタリア語では葡萄の収穫を表す「ヴェンデミア(vendemmia)」という単語が存在する。

後ろに背負っている小さな巾着袋がカワイイ。洋服の裾の部分も非常にキュートである。

同じ作家さんが作ったと思われる、非常に保存状態のよい騎馬像。お馬さんの表情がよいな~。

フェラーラのカテドラーレ美術館

こちらは左端に、12星座のカニ…ザリガニに見えるけどカニがいるので、かに座の季節を表したものだと思われる。かに座のギリシャ神話でのエピソードは結構むなしい。ヘラクレスに踏みつけられるだけの脇役かつやられキャラである。ちなみに私はかに座。

フェラーラのカテドラーレ美術館

いて座を表したもの。

フェラーラのカテドラーレ美術館

おひつじ座かな?ローマの雌狼の乳を飲む、ロムルス・レムスを思わせるような構図。

フェラーラのカテドラーレ美術館

双子を抱っこしながら一生懸命糸を紡いでいるお母さん。真剣な表情が非常に印象に残る。ふたご座の象徴なのかな?それとも労働の方がメインだろうか。

フェラーラのカテドラーレ美術館

これはまた異様に愉快な彫刻。わけわからなすぎ。幻獣ユニコーンとさわやかに会話している男性の下の方には、めちゃめちゃ怒っている動物たち。少なくとも「てめえ、オレの昼飯食っただろ!」以上の怒りであることは確かそうである。何なんだろうなー。こういうのの謎解きができるようになれば面白いだろうなー。

この「月の巨匠」の彫像は、非常に興味深く、姉と私はほとんど貸し切り状態の展示室に、かなり長時間居座ってしまった。係員の女性が2人いて、我々が入室する前は二人でしゃべくっていたが、我々が入ってきたら真面目におしゃべりをやめた。

だが、おしゃべりを再開したいのか、「このジャッポネーゼたちまだ出て行かないのかな…」というような目線で、ずっと我々の動向を伺っていた。私はこういうのが少しプレッシャーに感じるのだが、姉はへっちゃらである。姉のこういうメンタル力を、甲子園で智弁和歌山のジョックロックにやられる投手たちに分けてあげたい。

さて、ようやくこの展示室を出ると、順路が終わってしまった。

私「あれ?地球の歩き方に載っている『ザクロの聖母』がなかったよね?」。

切符売り場まで戻り、係員さんに『ザクロの聖母』の写真を見せて、「この作品は今日は見れないんですか?」と聞いてみた。すると「見れますよ!案内しますよ!」と戻った先は、今まで長々と滞在していた展示室。

係員さんがニコニコしながら「こちらです」と指したのは、コスメ・トゥーラの扉絵に完全に隠れて死角になっている場所!

フェラーラのカテドラーレ美術館

ちょっと童顔の聖母マリアがかわいらしいじゃありませんか!見逃しそうで危なかったよ!ヤコポ・デル・クエルチャの作品。ルッカで彼の作った、大変に美しい少女のお墓を見たことがある。若くて無垢な女性像が得意なんだなあ。

フェラーラのカテドラーレ美術館

この聖母マリアは、キリストの受難の象徴であるザクロ(赤い色やギリシャ神話の冥界エピソードに由来するらしい)を手に持っていることから『ザクロの聖母』と呼ばれている。この何気ない手だけ見ても、非常に美しい作品だ。本当に見逃さなくてよかった!!!

この展示室でおしゃべりをしたかった係員さんたちは、長々と滞在した私たちが戻ってきたのを見て不思議がっていたが、「あっ!そういえばあの裏側まで行ってなかったかも!」という感じで妙に納得していた。

というか、このカテドラーレ美術館は、何か理由があって隠しているのか!?というような場所に『ザクロの聖母』を展示している。コスメ・トゥーラ作品の裏側なので、必ず裏まで見るのを忘れないようにしてください!

3/16フェラーラ旅行記3 絶望の頭上ではパーティがへ続く

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