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3/20アグリジェント1 神殿の谷で最もしょぼいグラサン

<今回のイタリア旅行記メニュー>
~神殿の谷~
●ディオスクロイ(カストール・ポルックス)神殿
●ジョーヴェ・オリンピコ(ジュピター)神殿

 アグリジェントといえば、ギリシア神殿のある「神殿の谷」。

 その神殿の谷は、我々が宿泊するアグリジェントの市街地の、下に広がっている。歩いて行けないこともない距離らしいが、路線バスが頻繁に通っているらしいので、時間の節約のためにも、バスに乗って行くことにした。

 もー、ギリシア神殿のことで頭がいっぱいの我々は、食事もギリシア神殿を見ながら食べるのが良かろう、とのことで、Alda Moro広場のBar Milanoというバールで、パニーノを購入して、お持ち帰り用にラップでくるんでもらった。ここのバールは、アグリジェントで入ったバールの中で一番、食べ物も飲み物も美味しかった、おすすめバールである。

 神殿の谷へ行く路線バスは、市街地の北東にあるバスターミナルから出発する。途中で、鉄道駅でも停車するが、始発となるバスターミナルの方が、スタッフさんなどが多く、いろいろ助けてくれるので、バスターミナルから乗車するのがおすすめである。

 というのも、神殿の谷へ行く路線バスは、意外と厄介なのである!

 TUNというバス会社が、小さいサイズのバスを走らせているのだが、路線がいろいろある。まず、路線名がVerde(緑)とか、Rossa(赤)とか、色の名前になっている路線は、神殿の谷方面に行くバスではない。

 宿泊しているB&Bのオーナーの説明では、路線バスのうち、1、2、3番以外に、数字の下に斜め線が入っている2/番と、3/番という、不思議な路線があり、この5つの路線、つまり1、2、2/、3、3/の5つが、どれに乗っても神殿の谷に行けるとの説明であった。

 しかし、バスターミナルで、その場にいたスタッフさんに聞いてみると、1、2、3/だけが神殿に行くバスだよ、とのお答えであった。どちらが正しいのかはわからなかったが、とりあえず1番バスが来たので、運転手さんに、神殿の谷に行くことを確認し、着いたら教えて下さいと頼んで乗り込んだ。

アグリジェント
 これが、TUNの1番線だよ。TUNってトゥンと読むのかね。かわいいね。かわいいけど、わかりにくい路線バスだよ。バスターミナルでの乗り場も、ターミナルの角の所に適当に停まる感じで、わかりづらい。ちなみに、バス切符は事前購入が必要で、タバッキやバールで購入することが出来るよ。

 ちなみに、次の日は考古学博物館に行く予定なのだが、この博物館へ行くバスについても、何が何だかよくわからなかった。まあ、その話は、博物館の旅行記で書くこととしよう。

 バスは、市街地をゆっくりと下って行った。イタリアではよく見る地形で、下に広がる広大な谷と、高台に分かれていて、高台の方に人々が集まって住んで町を作り、下の谷には自然が広がっているのである。しかし、アグリジェントでは、自然だけでなく、古代ギリシアの遺跡が、だだっ広く点在しているのだ。

 途中で、姉が「あれが博物館じゃないかな」と言った建物を通り過ぎた。博物館に行きたい人は、バスの運転手さんに頼んで、途中で降ろしてもらう必要があるらしい。博物館を通り過ぎて、何にもないあたりでバスは停車し、運転手さんに「ここが神殿の谷の停留所だよ」と降ろされた。

 B&Bのオーナーの話では、バスは、ヘラクレス神殿近くで降ろされるとのことだった。しかし、姉が「ここ、ヘラクレス神殿の近くじゃないよ。ヘラクレス神殿は、もう通りすぎたよ」と言う。姉調査によると、バス乗り場は、ディオスクロイ神殿近くに変更になったという情報もあるらしい。で、実際我々が降ろされたのは、ディオスクロイ神殿近くの入り口であった。

 帰りのバス停は、降りたバス停のお向かいにあったので、帰りはここから帰れば大丈夫だろう。さあっ!早く神殿の谷に飛び込むよッ!

アグリジェント
 神殿にたどり着く前に、敷地内に咲いているアーモンドの花が迎えてくれた。アーモンドの満開は毎年2月頃なので、満開の時期は過ぎてしまっていたが、それでも今年は寒冬だったおかげで開花が遅れ、完全に散ってしまわずに、ちらほら残っている。今年のシチリア旅行は、寒さや天候の悪さに悩まされたが、アーモンドの開花が遅れてくれたことだけはラッキーだった。

 そして現れたのは…

アグリジェント
 じゃーんっ!ディオスクロイ神殿っ!別名カストール・ポルックス神殿。いわゆる、星座のふたご座神話の元になった、カストールとポルックスの双子神を祀った神殿ということだが、本当に実際そうであったのかは、わかっていないらしい。

 このカストールとポルックスの双子の神話は複雑で、一口で言ってしまえるものではない。だが、小さいときに、絵本のギリシア神話で読んで、非常に悲しいお話だったのは覚えている。

 その悲しい部分だけを抜粋してみよう。この双子、兄カストールは人間なのだが、弟ポルックスは半神半人である。何で双子なのに、そんなことが起きるのかというと、双子のお母さんレダが、同時期に、人間と神様(これはもちろん好色ゼウスだよ)と関係を持っていたため、両者の子供を、同時に身ごもったのである。

 …理屈としてはわかるが、そんなことあるのね。ちなみに、非常に低い確率だけれども、実際の人間でも、起こり得る現象で「重複妊娠」と呼ぶらしい。

 で、人間であるカストールは、ある日死んでしまった。ポルックスは、半神なので死なない。双子はとても仲が良かったので、ポルックスが、父親であるゼウスに、「お兄ちゃんと一緒でなければ生きてても意味ない!」と訴え、心を打たれたゼウスは、二人がずっと一緒にいられるように、天に上げて星座にしてしまった。それが、ふたご座の由来神話である。

 双子と聞くと、頭に浮かぶのが、ローマ建国の双子、ロムルスとレムスである。でも、この双子は、最後に仲違いしてしまうのよね。

 双子とくると、その仲の良し悪しが気になるように、カストールとポルックスも、信仰の対象としての神というより、神話のストーリーで語られる、キャラクター的な感じがする。ギリシア神話の面白さは、やはり、神様たちが、まるで等身大の人間のように、ドラマを繰り広げるところだ。

 ギリシア神話を語り継いだ人々にとって、ギリシア神話の神様とは、もしかしたら物語の中のヒーローやヒロインと、あまり変わらないような存在だったのかもしれない。現代の漫画で読むような、外観はほとんど人間であるが、非現実的な能力を持っているキャラクターと、重なって見えてしまう。

アグリジェント
 神殿の柱と柱の間からは、近代的な巨大なビルが立ち並ぶ、アグリジェントの市街地が見える。神殿の谷から見るアグリジェントの市街地は、まるで近未来の都市のような不思議さがある。

アグリジェント
 このディオスクロイ神殿の近くにベンチがあったので、腰かけて、持参したパニーノを食べた。周りに観光客はほとんどいなかった。ランチを食べながら、ギリシア神殿を二人占めする、この贅沢さったら!

 …という幸せに浸っている時に、な、なんと、私のグラサンが壊れた。べ、別にイキがってグラサンかけてるわけじゃないよ!神殿の谷は、陽を遮るものがなく、まぶしくて大変という情報があったので、グラサンを装備してきたんだよ!

 神殿の谷を歩くために、日本から持参してきたグラサンなのに、神殿の谷の、まだ入り口近くで壊れてしまったよ!つまり、このグラサンが、安物であることはわざわざ書くまでもないことだと思うが、ここで諦めないのが、私の貧乏人根性である。

 グラサンの、耳にかける所と、レンズ部分のねじが外れてしまっていたので、ちょうど食べたおやつのカスを、紐状にして、そのねじが外れている部分を結んでやったぜ!

 そしたら、傍から見ると、「何であの人、グラサンに黄色いゴミひっつけてるんだろ」って感じだけど、一応、これで装着することはできたので、「陽を遮る」という、グラサンの本来の働きは果たすことができるんだぜ!私のグラサンは、オシャレのためじゃなくて、陽を遮るためのものなんだから、無問題ッ!(いや、絵的に問題あるだろ…)

アグリジェント
 ディオクロイ神殿の足元に転がっている遺跡と、その周りに咲き乱れている黄色いお花。たとえ私のグラサンが壊れようと、神殿の谷は平和である。

 というわけで、ダサすぎるグラサンをかけて、神殿の谷を闊歩する私。ダサすぎるグラサンと、古代ギリシアの奇跡の邂逅っ!

 ディオスクロイ神殿の次に現れるのは、ジュピター神殿(ジョーヴェ・オリンピコ)

 アグリジェント
 ダダダダダダ―っと、遺跡の山が広がっている一帯である。

 ただただ瓦礫だけが広がるジュピター神殿。ココの何がそんなに見どころなのかというと、ここには、ひっじょーに、ひっじょーに大きな神殿があったのだ。ギリシア神話の神々の中のボス、ゼウスに捧げられた(ジュピターってのはゼウスの英語名だよ)、ものすごい巨大神殿だったらしい。

 その巨大さを伝えるのが、地面に転がっている、巨人である。

アグリジェント
 デカすぎて、うまく写真に撮れないんだよ!

 進撃の巨人に出てこれそうなこの方は、テラモーネと呼ばれる、人間の形をした柱なのである。天を支えるアトラスの神話みたいに、このジュピター神殿には、装飾として、神殿を支える格好をした、人型の柱が作られていたのだそうだ。

 このテラモーネ…我々はいつからか、こいつのことを「ごろろんぽ」と呼んでいた…たぶん転がってたからだろうな。で、この「ごろろんぽ」は、こいつ自体8メートル近くある。じゃあ、8メートルくらいの高さの神殿があったのかというと、甘いッ!

 明日訪問する博物館の旅行記で詳しくは触れるが、実はこの「ごろろんぽ」の長さは、神殿の高さの三分の一にも達していないのだ。まーそんなこと言われても、あまり実感がわかないと思われるので、博物館の旅行記の時に解説するよ!実は、ここに転がっている「ごろろんぽ」はレプリカで、本物は博物館にあるんだよ。

アグリジェント
 そのレプリカの「ごろろんぽ」ではあるが、あちら側に広がるアグリジェントの市街地と一緒に見ると、古代と現代が合わさって、実にシュールな風景である。神殿の谷から見える、現代的な市街地の街並みを、興醒めだと言う意見もあるが、私は、古代と現代が向き合っている様が、なかなか面白く感じた。

アグリジェント

アグリジェント

 このジュピター神殿は、カルタゴ軍に徹底的に破壊されたと言われている。カルタゴというと、あの有名人ハンニバルがいたカルタゴである。

 今でこそ、観光の町としての部分だけが前面に出ているアグリジェントだが、古代ギリシア時代には、シラクーサと肩を並べるほどの、栄えた植民都市だったらしい。神殿の谷に残る遺跡は、その名残なのである。

 同じドーリア人(スパルタを作った人たち)が作った町である、シラクーサとアグリジェントは、お互いの腹を探りつつも、まあまあ友好な関係であったらしい。手を組んでカルタゴと戦ったり、アテネ(イオニア人の町)と戦ったりしている。

 しかし、カルタゴに天才ハンニバルがいたため、何度も苦杯を味わうことになり、巨大なジュピター神殿も破壊された。

 我々の現代文明も、いつかこのような瓦礫の山となってしまうのだろうか。できることなら、アグリジェントのように、人間同士の争いによって、せっかく作り上げた文明という作品を、壊してしまわないようにしたいものだ…なんて、広大に転がっている遺跡から、思いを馳せたりしたのである。

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