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3/1マテーラ4 絶景は強い風に吹かれて

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●ティモーネの展望台

 本日も、天気は晴れ。アルベロベッロからずっと、今回の旅行は、天気に恵まれている。天気の良い南イタリアを旅しているためかもしれないが、母は「お母さんは晴れ女なのよ!」と、根拠のない自信に満ちあふれていた。

 そもそも、朝、天気予報を見ていると、南イタリアどころか、北のミラノも20度前後の気温であった。ていうか、南イタリアよりミラノの方が気温高いし!2年前のイタリア旅行では、最高気温が毎日一桁で、雪が降る日もあったし、本当に2月、3月のイタリアの気候は読めない。

 ちなみに、誰一人スマートフォンやタブレット端末を持たない、独立独歩(ちょっと使い方違う)の我々は、天気予報は、いつも朝のテレビニュースで見ていた。その、朝のテレビニュースが、イタリアはちょっとケッサクである。主要ニュース→朝刊の見出し紹介→スポーツニュース→交通情報→天気→星占いの順番で進むのだが、何と、全体の所要時間15分くらいのこのメニューが、6時くらいから8時くらいまで、延々と無限ループで続いていくのである!つまり、ニュースなのに、延々と再放送を垂れ流しているのである!ニュースがライブ放送じゃないだなんて…。テレビニュースがテレビニュースたるところのアイデンティティを、失っている気がするのは私だけだろうか…。

 ただ、メリットもある。うっかり見逃しても、チャンネルをつけていれば、また元に戻るので、もう一度見ることができるのである。イエイ!大切な星占いを聞き逃しても、どーせ、15分もすれば、また同じ内容が流れるのさ!

 さて。今日も天気がよいが、どこに行こうか。おととい、昨日の散歩を通して、我々母娘は、3人とも心にふつふつと湧き上がってきている願望があった。「グラヴィーナ渓谷の、向こう側の高台に行きたいっ!」。

ムルジャの高台

 マテーラのサッシ街からは、谷を挟んだ向かい側に、殺伐とした岩山のような高台が見える。ムルジャの高台と呼ばれる地帯だが、そこにはティモーネの展望台と呼ばれる眺望スポットがあり、マテーラの町全体のパノラマを拝めるのだそうだ。言われてみりゃ、そうである。マテーラの全体を見るためには、マテーラの外側から見なければならないのは当然である。

 おまけに、ムルジャの高台には、洞窟を掘って作られた洞窟教会も点在しているそうで、その洞窟から眺めるサッシ街の風景は圧巻だと言うのだ。ただ、ムルジャの高台は国立公園なので、洞窟教会をめぐるハイキングは、ツアーを申し込まなければならない。加えて、軽く登山向けの格好をしなければならないそうなのだ。そういうわけで、洞窟教会めぐりはキビしいが、ティモーネの展望台までは、ツアーでなくても行けるそうなので、もしタクシーがつかまりそうなら(歩くのは無理)、ティモーネの展望台まで行ってみることにした。

 ホテルオーナーのおにいちゃんが、朝ご飯を持ってB&Bの部屋に入ってきた。やわらかな表情で、本日もお決まりの質問。「今日はどのような予定ですか?」。「実は、ティモーネの展望台に行ってみたいんです。タクシーを呼んでもらうことはできますか?」と聞いてみると、タクシードライバーをしている友達がいるそうで、すぐにその場で電話をかけてくれた。ありがとうっ!おにいちゃんっ!というわけで、タクシーがB&Bの前まで来てくれて、念願の「向こう側」に行くことと相成りましたっ!

 南イタリアらしく気さくな運転手さんで、英語も少ししゃべれるので、イタリア語と英語をまぜまぜにしながらお話しした。ティモーネの展望台に向かう途中の教会の前で、一度タクシーは停まった。タクシーを降りると、目の前の教会を指さして、「ここは残念ながら閉まってるね」と運ちゃんは言う。なら、なぜ停まったね?と思ったが、運ちゃんは、「こっち、こっち!」と、教会とは反対の方の山道の方へ、手招きする。明らかに立ち入り禁止のロープをまたいで、奥の方へ入っていく運ちゃん。ロープを指さして、「入っていいんですか?」と聞くと、「いいよ、いいよ!」とのお答え。んじゃ、ついて行くよ。ロープってのは、またぐためにあるわけですよ。

洞窟教会への道

 この道を奥に進むと…

洞窟教会

 …何とっ!ひそやかな洞窟教会がっ!何て素敵なんでしょうっ!まるで隠れているかのように、ひっそりとした洞窟教会。これは、地元の人じゃなければ、なかなか知ることができない教会でありましょうよ!

洞窟教会内部

 扉に錠がしてあり、中には入れなかったが、柵越しに、しっかりのぞくことができた。本当にひそやかで、ささやかな洞窟教会。イタリアでは、芸術作品で飾られた、豪華絢爛な教会をたくさん目にするが、このように、庶民のための、質素でささやかな教会は、風情たっぷりで、また違う魅力がある。

 この洞窟教会を見学した後、タクシーはググッと上の方に登り始めた。いよいよティモーネの展望台へと上がっていく。その上がっていく道の途中で、また運転手さんが途中でタクシーを停めた。「こっち、こっち!」

 運転手さんの後をついていくと、何だか意味ありげな穴が!

運転手さんと洞窟教会へ

 そう、ここにも洞窟教会っ!私は、洞窟って何だかコワイのだけれど、地元の人が一緒にいれば、何となく安心する気分になるのはなぜだろう。

 中はひんやりとしていた。特別、フレスコ画のようなものは残っていないんだなーと見まわしていると、運転手さんが壁を指さして教えてくれた。何と、古い古い、線画が残っているのだ!

洞窟教会お馬さんの絵
 これは、お馬さんですな。

洞窟教会太陽の絵
 これは、おそらく太陽ではなかろうか。

洞窟教会人間の絵
 これは…。自信はないけれど、人物像であろう。何だかとてもキリキリした性格の人物に見えるが。運転手さんいわく、これらの線画は、4~5世紀くらいに描かれたものなのだそうだ。

 いやー、ティモーネの展望台にたどりつく前から、おもしろいことだらけだよ!ティモーネの展望台の手前に建物がちょこんとあり、それがバールだそうで、帰りは、1時間半後くらいに、このバールに運転手さんが迎えに来てくれることになった。ティモーネの展望台には、ツアーバスなどが停まる駐車場があるが(この駐車場は、マテーラのサッシ街からかすかに見える)、その手前でタクシーから降りて、運転手さんといったんお別れした。

ティモーネの展望台はこんな場所
 ティモーネの展望台は、こんな風に、何にもない、荒削りの自然っ!て感じである。風が強くて、帽子なんかかぶっていられない。私は母に耳当てを貸してあげて、自分はダウンコートのフードをかぶった。荒削りの自然ではあるが、ちゃんと人が通るための道は作ってあって、登山靴でなければ歩けないということはない。ただ、ヒールのない靴の方がよいと思われる。

ティモーネの展望台お花畑
 足元には、小さなお花が一面に、かわいらしく咲いていた。荒々しい岩肌と、強く吹きすさぶ風にミスマッチなような、逆に似合っているような。

 強い風に吹かれながら、マテーラの町の眺望を拝むために、展望台の前方へと進んでいく我々。ようやく、ガケの端っこの方に出ると、何だこりゃー!

 強風が吹きすさぶ渓谷の向こうに、ガケの上にへばりつくように作られた、マテーラのサッシ街全体が広がっている。このスサマジイ光景には、絶句するしかなかった。ゼックですよ、ゼックっ!圧倒的である。迫力満点である。

 写真では、強風の中、ガケの上に、いまにも崩れてしまいそうに広がる、マテーラのサッシ街と向き合う、あの緊張感にも似た感動を、なかなか伝えきれないものがある。

ティモーネの展望台から見たカヴェオーソ地区
 こちらは、原始的な洞窟住居の広がる、カヴェオーソ地区の眺め。いったいどうして、こんなガケにへばりついたような場所に、住み着こうと考えた人たちがいたのか。マテーラの町の起源は、旧石器時代にさかのぼると考えられているが、はっきりしたことはわかっていないそうだ。

 この展望台からサッシ街、特にカヴェオーソ地区と向き合っていると、何とも形容しがたい気分になった。それはネガティブなものではなく、圧倒的なものを見たことによって、何か、新しい思想が生まれそうな、そんな気分である。ただ、それはあくまで「気分」なので、なーんにも実際に新しい思想がうまれたわけではないのがミソ。

ティモーネの展望台
 ぽんぽん草のようなものが生えていたティモーネの展望台。ぽんぽん草は何をか思ふ。ちなみに、ぽんぽん草というのは、私の造語。

 ティモーネの展望台はがけっぷちな上に、手すりとかはナイ。まあ、がけっぷちとは言っても、断崖絶壁ではなく、段階的にガケになっているので、万が一落ちたとしても、すぐにひっかかるところがあるので、そんなに危険は感じないし、高い所がちょっとくらいコワイ人でも大丈夫とは思われる。ただ、風がとにかく強いのが、用心のしどころだった。好奇心ガールの母は、何度もフラフラとがけっぷちのギリギリまで足を運んで、下をひょいっとのぞくので、姉に「お母さん!!!危ないがね!!!」と叱られていた。何度姉に叱られても、フラフラとがけっぷちに近づく母。「言うこと聞かないなら、もう帰るよ!!!」と、さらに叱る姉。母娘の関係は、数十年立つと、立場逆転するものなのだなあ(でも、叱られてもへっちゃらの母)。

 姉がそろそろマジ切れしそうだったので、私が名案を発表。「お母さんは、私の後ろから、私が行く道をついてくるようにしよう」。私は高所恐怖症ではないが、高いところチョイ怖がりなので、そんなに危ないところには足を運ばないのだ。母は不満そうだっだが、母の耳元で、「ホラ、お姉ちゃんが本当に切れそうだから、ね」となだめる私。しぶしぶ、母は私の後ろをついてくることになった。姉は最後尾に控えて、母の行動に目を光らせていた。

 ちょっと、急な手すりにつかまって、軽ーい(本当に軽ーい)ロッククライミングをして降りなければならない場所を発見。その下に、洞窟教会がありそうだったので、みんなで慎重にゆっくりゆっくり降りてみた。「お母さんは、お父さんとよく山に行ったから、こういうところはあんたたちより上手に降りれるのに」とか、ぶつくさ言う母。うちの母って、今気づいたけど、結構、自画自賛ガールだわよね。だけど、家族の外では、常に謙遜ガールなのがミソ。
 
 降りたところには、「サンタ・アニェーゼ教会(だったかな?うろ覚え)」という洞窟教会があった。

ティモーネの展望台の洞窟教会
 こちら。残念ながらドアに錠がしてありました。
 
ティモーネの展望台の洞窟教会内部
 錠はしてあったが、中は見えたので、ちょっとのぞき見。かなり薄くなっているが、聖母子像と思われるフレスコ画がうっすら残っている。このような洞窟教会は、その昔、イスラム勢力から逃れてきた修道僧が作ったものとも言われている。このような静かな洞窟の中、ささやかな祈りを捧げていたのだろう。その時代にも、洞窟の外では、今日みたいに強い風が吹きすさんでいたんだろうな。

 ちなみに、ティモーネの展望台には、こんなふうに、今にもずり落ちてきそうな巨石などもあった。

ティモーネの展望台の危ない道
 巨石の前部分が、ちょっとした道になっているのがおわかりだろうか。このような道を歩くことになるのだ。まあ、風も強いし、姉が心配しまくるのもわからないではない。「別に、私は転げ落ちることを心配してるんじゃないよ!強風でバランスを崩して落ちてしまうかも、って言ってるの!」。さいですか~。でも、姉は、絶対に、自分が落ちることは心配していない。母と私が落ちることを心配してるのだ。姉ってそういう人である。だけど、ヴェネツィアの運河に落ちたのは、お姉ちゃんだった、よね…?(「落ちてない!すべっただけだ!(By姉)」)

ティモーネの展望台から見たバリサーノ地区
 こちらは、渓谷を挟んでの、チヴィタ地区・バリサーノ地区の眺め。がけっぷちに、折り重なるように作られたサッシ街。重みでガケが崩れてしまいそうで、心配になる。

 いつまでもいつまでも見ていたいような眺めであったが、運転手さんとの約束の時間が近づいてきたので、バールの方に向かって、歩き出すことにした。ありがとう、ティモーネの展望台っ!本当に「渓谷の向こう側」に行ってよかったっ!マテーラに行く方、マテーラの眺望を楽しみたいなら、ティモーネの展望台に行ってみることを、強く強く推薦しますぜ!

 …さて。歩けども、歩けども、バールにはたどり着かないよ。母いわく「車を運転する身から言えば、バールはまだまだ先だと思うよ(キラーン)」。そんな誇らしげに言われても…。

バールが遠いぜ
「バールのバの字も見えないぜー」の、母と私。姉が後ろから隠し撮りしたらしい。

 困ったなあー。タクシーの運転手さんに会えないと、マテーラの市街に帰れないよーと思ったが、実はあんまり困ってなかった。圧巻の景色を見たことで、何だか気が大きくなっていたのである。

 そこに、前方から、タクシーが!

 あの運転手さんが、窓を開けて、手を振ってきた。「バールにいなかったから、ここまで来てみたよー!」。おおー!運転手さんスゴイっ!あんたプロだよ!一握りだよ!(「一握り」というのは、イタリア人を賞賛する時に私が使う独特の言い回しである)。

 運転手さんにB&Bまで送ってもらって、ティモーネの展望台への遠足は終了。往復で40ユーロくらいでした。道中の洞窟教会もガイドしてくれて、しかもバールにたどりつけなかった我々を、機転を利かせて拾いに来てくれた運転手さんは、イタリア旅行2012における、イタリア人の部門MVPの最有力候補にノミネートされることになったのである。

3/1マテーラ5 洞窟の奥の遠い記憶へ続く

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Author:辺獄
貧乏なくせに、イタリア旅行というお金のかかる趣味を持ってしまった、「イタリア旅行貧乏」です。旅行は楽し♪びんぼーも楽し♪がモットーです!
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好きなイタリアの画家はボッティチェリ!

(limba→辺獄へ和訳改名しました!)

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